【あんスタ】甘い砂糖と切ない涙【短編集】

羽風薫『夏は終わらない』(涙少なめ)(書き直し) ページ4

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「かおるは『あのこ』といると、よりきらきらしますよね」

「え？なに急に。『あの子』って誰のことなの？」



彼はいつもそうだ。ゆったりと紡ぐ言葉は意味を教えず、湿った髪をゆらゆら。楽しそうな声を口の端から漏らす。



「ふふふ、わかってるくせに〜♪」

「いやいや、話が突然すぎてわかってないから。ていうか今日はテンション高いね？」

「きのうは『せ〜とかい』のひとがきたのであまり『みずあび』できなかったんです⋯⋯」



黄緑を濡れたまつ毛で覆い項垂れる。なるほどね。昨日充分に水浴び出来なかった分嬉しさが増しているらしい。楽しそうな彼に自身の口も弧を描いた。



「かおるはすきなことできましたか？」

「う〜ん、最近寒くなってきてサーフィンも出来ないしなあ。今日はまだ出来てないかも」

「おんなのこの『はなし』もききませんしね〜」

「そう？」



女の子の話はしてる気がする。ほら、幸せそうに笑うあの子とか。化粧をした大人っぽい女の子より露出の多い服の女の子より魅力的で、見ているだけで満たされるはずなのに近くにいるともっと欲しくなるような。



「──『あのこ』がきましたよ」



視線を辿って顔を後ろに向けた。⋯何やってるの俺。こんなこわばった表情、女の子に向ける顔じゃないでしょ？笑顔で名前呼ばれたのに微妙な笑顔しか浮かべられないなんて。



「Aさん、こんにちは〜♪」

「奏汰先輩こんにちは〜！一緒にぷかぷかしてたんですか？」

「ちがいます。かおるはいっしょに『ぷかぷか』してくれないんです⋯⋯」



悲しそうに言う彼に笑って『ぷかぷか』の約束をする彼女。どうしたのって聞くために口を開いた瞬間止まってしまう。そんなかわいい笑顔向けられたら心臓がうるさくなるんだ。



「薫先輩に用があって来たんです！」

「え、俺？」

「はい」

「えっ、と⋯⋯用って？」



口を結んで笑った彼女に手を握られる。見せたいものとかがある時こうされる。手なんか繋がなくても、俺はずっとAちゃんの側にいるのになあ。



「あっ！じゃあね奏汰くん」



彼の別れの言葉も聞いて前を向くと笑顔のAちゃんがいる。繋がった手に今度は笑顔が溢れ出て制御出来ない。




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「やっぱりきらきらしてますね」



夏は終わったのに、噴水の水が眩しくて。


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