41 天気予報は嘘をつかない ページ41
見慣れた白髪のアナウンサーが画面の中で梅雨入りを告げ、今日この金曜日もそれに相応しい雨が降り続けていた。部活開始時間になっても青空が姿を見せることはなく、部活自体は空き教室から始まったのだった。
顧問の先生が教壇に立ち咳払いを一度すると途端に教室は静まり返る。階段の方からはどこかの部活が階段ダッシュをしているのだろう、靴が廊下と擦れる音がここまで響いていた。注目を浴びた先生ははじめに部費についての連絡を述べた。そして今日は休養日だということを続けて伝え、少しだけ部員の雰囲気が柔らかくなった。暫く休みが無かったから、選手にとってもいい休養になりそうだ。
「ああそれと、明日の試合は延期なったから。来週に」
「はあ!?」
「ええ!?最初に言ってよ!!」
「ごめんね。明日も雨予想ということで、既に通告がありました」
一段と騒がしくなる教室に、先生は申し訳なさそうな表情を浮かべていた。それでも小さく息を吸うとぱん、と両手で大きな音を出した。再び静寂が訪れ、注目が集まる。
「一週間で、何ができるのか。相手も同じ。各自、密度の濃い時間にするように」
たった一週間だが、猶予が与えられたことに安堵した気持ちになる。一週間、二十四時間が七回分。マネージャーの私には何ができるのか、深く考えるきっかけにもなるだろう。
十分程でミーティングは終了し解散の流れで、部長が真っ先に立ち上がる。何か連絡ある人います?と辺りを見回し、いないことを確認すると、事務的な締めの挨拶をするために咳払いをした。
「さっきも先生言ってはったけど、それぞれこの一週間大事に過ごしてください。それじゃ、さよなら」
うい、お疲れ、と皆が其々の言葉を口にして、鞄を抱え解散していく。かくいう私は、このまま残って部室の掃除でもしていこうかと考えていた。
「A、帰るで」
「……え、あ、はい」
「なんか用事か?」
「っいえ、大丈夫です」
あまりにも当然のことのように言われて、つい焦って返事をしてしまった。……掃除は、明日の早朝にしよう。そう決めて、既に教室を出かかっている彼の背中を慌てて追いかけた。
玄関まで向かっている最中、ふと今日の雨模様を思い出した。彼は自転車だから傘は持っていないだろうし、あるとしたらカッパだろう。徒歩の私と帰るのに、カッパをわざわざ着るのだろうか。そもそも直ぐに帰った方が絶対に濡れないだろうに……そう考えている間にも、玄関に着いてしまった。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…好き… (2021年4月2日 8時) (レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 『夢小説』やなくて『小説』読んでるみたいな感じになるし、ストーリーは面白いし、作者さんええ人やし…この小説の大ファンになりました(単純) (2019年10月30日 15時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - もうなんか今のこのもどかしさが喉の奥に詰まって泣きそうなくらいにこの作品好きです。応援してます。 (2019年8月7日 0時) (レス) id: 6511620324 (このIDを非表示/違反報告)
Souha - キャーknサンイケメーン((( 内容と作者様の書き方が好きです。!もう…なんかやばすぎました。 あと、更新頑張って下さい!もうこれは全裸待機ですね!! (2019年7月18日 21時) (レス) id: 60f9fe5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
usikosan(プロフ) - しゅきやわ (2019年6月8日 14時) (レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
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