あんさんぶるパパーズ！【短編集】

【朔間凛月】〜3〜 ページ36

〜2〜のつづきです。


あの日から私は、とにかく動きまわって食事を減らした。

夜に出歩くわけにはいかないので、朝早く起床して三キロ走り込み。

食事は炭水化物を減らして、野菜中心の食生活。

スイーツは作ってくれる父に申し訳ないので、ある程度だけ口にする。

寝る前には軽く柔軟体操、ストレッチをみっちりこなしてから眠りにつく。

あとは、時間があればとにかく運動することを心がけた。


こんな生活を続けてから一ヶ月。

体重はどんどん減り、ダイエットを始める前の数値をとっくに下回っていた。

気になっていた二の腕も、随分と細くなった気がする。

ダイエット内容は過酷だったが、純粋に努力で自分の体が変わっていくのは面白い。


すっかりこの生活リズムが身に付いた私は、ある別の問題に悩まされていた。

最近、頭痛が頻繁に起こるのである。

それだけじゃない。

力が入らなかったり、授業に集中出来なかったり。

挙げ句の果てには顔色も真っ青になっていた。

もともと色が白い方だったせいで、異様に具合が悪そうに見える。


さすがに見ていられなかったのか、ある日両親がダイエットをやめるように声をかけてきた。


「ねぇ、A。もうそろそろ終わりにしたらどう？」

『やめるって…何のこと？』

「ダイエットのことなんだけど。A、無理してるでしょ。顔色優れないし、具合悪そうだし。血だって不味くなってるんじゃない？」


私の首筋をするりと撫でながらそう告げる父の声音は、どこか不安気なものであった。

恐らく、心配してくれているのだろう。

吸血鬼なのに朝早くに走り込みなんてしているし、目を輝かせながら飛び付いていたスイーツにも、最近はあまり関心が無いものだから。

それでも、私は、


『ごめん、パパ。それはできない。』

「できないって……。このままじゃ、A本当に倒れちゃうよ？」

『それでも、もとに戻るよりはマシだから。』


大丈夫、心配してくれてありがとう。

そうやって微笑むが、父の表情は一向に晴れることはなかった。

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