死に囚われた人【第五人格】 (ページ29)

今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:61,415 hit

27 ページ29

息ができない、苦しい。
でも抵抗する気は起きなかった。ただ、体の力が抜けるにつれて自然とジョゼフさんの手首を掴んでしまう。掴む気なんてないのに。
段々意識が遠のいて、あ、落ちる、って―――――――

「その手を離しなさい写真家！！！」

マーサが信号銃をぶっぱなした。
ジョゼフさんの手は離れ、力の抜けた私はその場に座り込んで噎せてしまう。いきなり酸素が入ってきてこれはこれで苦しい。

「っは、ぁ、」

私の咳がやっと納まった頃に信号銃の煙幕も引いた。
エマとエミリーが急いで駆け寄ってきて、他の人達もこっちを覗き込んでいる。興味、心配、迷惑。その感情だけが読み取れた。

(…思ったよりめんどくさい事になりそう)

酸素が足りないせいでロクに働かない頭ではそんな事しか考えられなかった。エマやエミリーの声も、右から左へと流れていって、ダメだ、何も分からない。

「A、A…Aッ！」

「っはぇ！？何！？」

「…よかった、大丈夫そうなの。」

エマがほっとしたように息をついた。
ジョゼフさんの方に目を向けると何やらリッパーと美智子さんに説教されているよう。もしかしたら私も説教ルートかな、なんて考えていたら不意に体が浮く。え？

「じゃあお願いね、エリスさん。」

「おう、任せとけ！にしてもお前軽いな、ちゃんと食ってんのか？」

「…ぇ？？？」

まって私今知らない人にお姫様抱っこされてるんだけど。我羞恥也。

「ああ、自己紹介がまだだったな！俺はウィリアム・エリス！」

「ｱｯ篠原Aです…」

戸惑っている間に医務室に着いたよ。何があったんだろうね。ちょっとよくわからないや。