ただ好きなだけ【土方十四郎】

気分転換 ページ6

- 土方side -



近「トシ、お前 最近 煙草の本数 増えてないか？」









若干引いてる近藤さんの言葉で銀色の灰皿に吸った煙草が山になってることに気が付いた



日を追うごとにイライラが募る



ストレスがなくなる煙草を何本吸おうと消えやしないから余計に腹が立ってまた煙を肺いっぱいに吸い込んでは吐き出す



原因は——








沖「仕方ねぇですよ近藤さん

　 来るって言った女がもうひと月も来ねぇんだ」



土「仕事が溜まってんだよ」



近「トシにも好きな子が出来たみたいで俺は嬉しい！」



土「だから違ぇって言ってんだろ

　 すぐにそっちの方面の考えになんなよ、中学生か」








別に俺のことなんざ忘れてくれて構わないんだが、落し物 拾ったなら早く来いっつの



断じてまた会ってみたい訳じゃねぇけど



こんな思考がごちゃごちゃと入り混じり、目の前の仕事が手に付かなくなってきたから仕事は溜まる一方



煙草の箱から新しいものを取ろうとしたが既に空箱



苛立ちをぶつける先がなく、ﾁｯと舌打ちにして昇華



気分転換ついでに煙草 買いに行くか








土「ちょっくら出てくる」



沖「あのモブ女にとうとう会いに行くんですかい？」



近「トシ、あんまりしつこくしすぎるなよ！」



土「違ぇって何回 言わせんだよ、それにあんたには言われたくねぇ」



沖「まぁごゆっくり」



近「今夜は帰らなくても大丈夫だぞ」



土「まだ真昼間だっつの」








小馬鹿にしたようなニヤけ面した2人を背に屯所を後にする



行きつけの煙草屋のおばちゃんはなかなか鋭いため余計な詮索されたら面倒だ



たまには違うとこで煙草買うのも良いか



屯所からは少し遠く離れた、華やかな映画館の隣には似つかない随分とこじんまりとした煙草屋



営業しているかも分からないがこれ以上遠くに行くのも手間が掛かって仕方ない








土「すまねぇが、マヨボロを2箱 頼む」



「いらっしゃい、マヨボロで…す、ね」



土「どうした、早くマヨボロをくれ」



「土方さん…私です、覚えてないですか？」










首元までの黒い髪に、眉毛ほどで切り揃えられた前髪から覗かせる藍色がかった瞳、身長は俺の肩より下くらいだろうか



そんな娘にもちろん見覚えはないが



初対面の俺に突然 声を掛けてくる女はこれで2人目



散々だ










「矢野です、矢野A

　この間はお世話になりました」



土「あぁ、お前か……て、なるかぁ！！」

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