執事 ページ9
襟に赤いラインをあしらった黒い短めの上着の燕尾服から薄い水色のベストに金色のチェーンを垂らし、濃いめの青色のネクタイをきっちり締める
片眼鏡から落下防止のための鼻にブリッジさせ、こちらも金色のチェーンがついている
黒いズボンも着用し、どこからどう見ても執事と聞いて思い浮かべる理想像
の、はずなのに、その男の足元は毎日履いているのはトイレに置いてありそうな茶色いサンダル
せっかくの衣装が台無しだ
だけど、様になっていて "かっこいい" と言う以外できない
八「アラサーのコスプレは痛いだけだ
もう脱いでいいか?」
「まだ駄目ですよ、執事さん」
ここは色んな資料と薄っすら煙草の匂いが立ち込める国語準備室
文化祭でクラスの催し物でやることになった、メイド・執事カフェ
銀八先生も執事として参加してもらうため衣装合わせをしている
確かにアラサーのコスと考えると痛々しいけど、似合ってしまうから仕方ない
でも如何せん銀八先生からはやる気も生気もなくて、お客さんに奉仕する気がさらさらなさそうな執事が完成されてる
「先生、ちゃんと接客できなさそう。笑」
八「ああ?あんま舐めんなよ
それくらい朝飯前だ」
「じゃあちょっと何か言ってみてよ」
八「お帰りさないませ、お嬢様」
あり得ないくらいに棒読みでありきたりな台詞に私の表情は凍り付く
ほんとに大丈夫なんだろうか…と心配になって、練習しようなんてノリで言わなきゃよかったと思うまであと数秒
先生の目つきが変わったことには気づかない
八「おっと、お嬢様の綺麗な御髪が乱れております
こちらへお座りください」
執事と言うにはあまりにも荒々しく私をソファに座らせポニーテールにしていた髪を解き、背後から銀八先生の手櫛によりするすると髪が整えられる
あまりにも唐突な出来事に頭はついていけないけど、心臓は一丁前についていき、触れられている髪の先までバクバクと唸っているみたいだ
八「緊張してんですか?」
「そんなことない…です…」
否定はしたけど肩に力が入りまくっていて、それに気づいた先生は私を責め立てるように背後から顔を近づけて耳元でぼそりと言葉を零す
国語教師のくせに言葉遣いがなってないのも銀八先生らしくて悔しいけどドキッと大きく胸が躍る
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時