煙草 ページ26
八「俺と結婚すっか、A」
ドッキンと一度だけ大きく跳ね上がる心臓と共に誰かに頭を後ろから鈍器で殴られたような大きな衝撃が走る
頭が真っ白になって返事も何も声が出せない
高校生・大学生と妄想し続けて恋焦がれた世界で一番愛おしい人から告げられた嘘みたいな幸せな言葉
聞くのは二回目だけど改めて顔を突き合わせて言われると気恥ずかしい
こんな妙な香りがして、雰囲気もなにもない思い出ばかりが入り混じる部屋でのプロポーズされるなんて思ってもみなかった
だけど私たちらしくてすごく好き
八「返事は?」
「はい、結婚します」
私が返事をしたと同時に銀八先生は私を優しく抱き締める
あの煙草尾匂いが鼻腔を突き、奥の方がツンと苦しくなって目に涙が浮かんで、ズズッと鼻を啜る
八「泣いてんのか?」
「煙草が匂っただけだもん」
八「前はそんなんで泣かなかったろ」
「久しぶりだから…」
八「だったら存分に泣け」
銀八先生に更に力強く抱き締められれば大好きな煙草の香りに包まれて涙が止まらない
泣く子どもをあやすようにいつまでも抱き締め、優しく頭を撫でてくれた
一頻り泣いて、やっと泣き止んだところで銀八先生は「そうそう」と言い、小さい箱をポケットから取り出した
八「これ、貰ってくれるか」
「うん…グスッほしい…ッ」
銀色の指輪を私に見せて、指輪を渡すとは思えないくらい軽い言葉ですら嬉しくて堪らなくてまた涙が出る
力が入らないヘロヘロに震える左手を差し出せば、「泣きすぎだ馬鹿」と言いながら私の薬指に指輪を通してくれた
グズグズに崩れた顔できらりと光る指輪を見ればやっぱり嬉しくて泣き顔から笑顔に変化する
八「泣いたり笑ったり大変だなお前は」
「せんせ…ありがと、だいすきっ」
今度は私が先生に抱き着く
それをすんなり受け止めてくれる銀八先生が本当に大好きでしょうがない
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時