90話 ページ47
その日の夜、城戸さんの布団に入れてもらった。
城戸さんの寝相の悪さは蓮さんに忠告されたが、なんとかなるだろう。
「なんか嬉しそうだけど、いいことでもあった?」
「知り合いと仲直りできたんです」
「Aちゃんが誰かと喧嘩ってイメージあんまりないけど…。よかったな」
「うん、よかった」
******
それは城戸さんが帰ってくる二時間ほど前のこと。
おばさんに少しの間休憩の時間をもらった。
2階に上がり、鞄の中から工具を取り出す。
あと少し。あともう少しで完成なのだ。
「確かここの配線が間違ってたんだよね…」
前に一度完成さてみたのだが、一応動きはしたがしばらくすると止まってしまった。
後でチェックしてみて、欠陥は見つかったのだがこの間の立て籠り騒動のおかげで直すことができていなかった。
改良点もいくつか見つかり、そこも直してねじをしめる。
「できた!」
改造版バッタカンドロイド(もちろん会長さんに許可はとってある)。
これひとつでとても愉快なことができる。
(…あれ、ダメかな?)
ザザッという音がしばらく聞こえて、また失敗かと思い分解しようとしたとき。
『おい、何の用だ』
上手く繋がった。
相も変わらずぶっきらぼうそうな様子に、ふふっと笑ってしまう。
「アンク久しぶり」
改造版以下略は、他のカンドロイドに簡単な指示を送ることができる。
例えば「アンクと繋げて」とか。
『…Aか?』
会長さんだと思っていたのだろう、拍子抜けしたような、驚いたような声でそう聞く。
「うん。すごいでしょ、私の改造技術」
あんな別れ方をしたのによくもまあこんな気楽に話せるものだ。自分でもそう思う。
でも、今はアンクに悪態をつく気分にはならなかった。
「あれからちょっと考えて、やっぱりおとなげなかったかなって思ったもんだからさ。
じゃあ私すぐ戻らないといけないから。あと、アイスの食べ過ぎは体に悪いよ」
『おい待』
プツッ
アンクはまだ話そうとしていたが、もうそろそろ休憩時間が終わる頃だから通信を切った。
まあ後で謝ったらいいだろう。
「城戸さん早く帰ってこないかな」
みんなでご飯を食べて、その後またアンクと話そう。
きっとアンクにだっていいところはある。
きっと好きになれる。
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デリート(プロフ) - しおんさん» ありがとうございます。最近ビルドの方しか更新できていませんが、絶対に完結まではたどり着かせます! (2018年8月27日 20時) (レス) id: d5c354ea8b (このIDを非表示/違反報告)
しおん(プロフ) - 文章も表現も凄く上手くて一気に読んでしまいました!笑アンクとのやり取りがたまらなく胸きゅんします!更新楽しみにしてます!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 42e4f273a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:デリート | 作成日時:2018年2月15日 18時