87話 ページ44
「…?」
目を開いてまず疑問符が頭に浮かんだ。
寝心地のいいベッド。真っ白な天井。
(脱獄犯 さんは…)
そう思ってはっとする。
「城戸さん!!」
ベッドから飛び起きると、看護婦の格好をした女性が私のベッドの隣までやって来た。
「安静にしていてね。あんまり激しく動くと体に響くわ」
そう言って私をベッドに寝かせる。
「あの、私と一緒にいたはずの男の人と女の子は…」
逆らうのもよくないと思い、大人しくベッドに横たわって看護婦さんに聞いた。
「あなたと一緒に搬送されて、まだ眠っているわ」
何があったかは知らないが、とにかく無事らしい。本当によかった。
そこで落ち着いて、ようやく自分のおかれた状況に気付く。
私、気を失っていたんだ。
失神の原因は確か橘さんが教えてくれたことがあったはずだ。
病気だったり、感情の問題だったり。
(恐怖…)
それもその中にあったはずだ。
「お兄さんはもうすぐ着くらしいから、寝て待っていてね」
寝ながら首を傾げる私に看護婦さんはそう言うと、部屋から出ていってしまう。
「お兄ちゃんごめんなさい」
きっとまた無茶しただろって怒るだろう。
変な言い訳はせずに、ちゃんと謝ろう。そう思った。
******
案の定、お兄ちゃんはむすっとした顔で病室に入ってきた。
「城戸が止めた時点で、危ないってことはわかってただろ?」
置いてある椅子に座ると、私の眉間を人差し指でつつく。
「頭を撃たれたら死ぬことぐらい分かるよな?」
何があったかを知っているということは、城戸さんから事の顛末を聞いたのかもしれない。
「ごめんなさい。城戸さんを助けたくて…」
布団をぎゅっと握る。
「お前が何をしたかったのかはわかってるよ」
お兄ちゃんは私の頭の上に手を置いた。
「でも、俺も城戸も心配するんだ。それに、人質にとられて隙ができたりしたらAは自分を責めるだろ?」
布団を見つめたまま俯く。
「迷惑かけてごめんなさい」
私が人質になんてとられなければ、私がでしゃばって気絶なんかしなければ。
その思いは今私の頭のほとんどを占めていた。
「そういう意味じゃなくてさ…」
お兄ちゃんは困ったようにため息をつく。
「俺達はAちゃんに危険な目に合ってほしくない。それは分かるよな。
それは俺も剣崎もAちゃんのことが大好きだからなんだ」
「私だって同じだもん…」
このままでは堂々巡りだ。
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デリート(プロフ) - しおんさん» ありがとうございます。最近ビルドの方しか更新できていませんが、絶対に完結まではたどり着かせます! (2018年8月27日 20時) (レス) id: d5c354ea8b (このIDを非表示/違反報告)
しおん(プロフ) - 文章も表現も凄く上手くて一気に読んでしまいました!笑アンクとのやり取りがたまらなく胸きゅんします!更新楽しみにしてます!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 42e4f273a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:デリート | 作成日時:2018年2月15日 18時