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53話 ページ5

鏡の中に引きずり込まれる。
そう覚悟した。

一瞬引っ張られて、鏡の手前で止まる。

「あ、れ…?」

それ以上何も起こらなかった。
疑問に思って自分の腕を見るとあの触手の姿はなく、ただ血が流れているだけ。
鏡を見ればいつも通り。

「来てるんだ…」

助かったんじゃない。
助けてくれたんだ。

あの人が今、ここに来ている。




♠♥♣♦♠♥♣♦♠♥♣♦


「遥香さん、すみません…」

すっかり片付いた床を見て遥香さんに頭を下げる。

「いいのよ。それより手大丈夫だった?」

痛みもマシになってきた。
遥香さんがガーゼと絆創膏をくれて、有り難く使わせてもらう。

「はい」

服に多少ついた血は後で落とそう。
お湯で叩いて落ちるといいのだけれど。

「じゃあ、今日はもう帰った方がいいわね」

遥香さんの言葉に従って、ショルダーバッグを持つ。
トランプもまだ続けたいけど、傷口が開いてまた血が出てきたら堪ったものじゃない。

「お邪魔しました。天音ちゃんにまた明日来ると伝えておいてください」

一礼してお店を出た。


「近くにいるはず…!」




家までの道を走りながら、ガラスや道路のミラーを見る。
どこかにいるはず。どこかに。

探しても探しても見つからない。
遠くに行ってしまったのか、私が見落としているのか。


今度は違う道を見てみようと踵を返すと、誰かに腕を掴まれた。
人間の手じゃない。

「さっきの…っ!」

駐車している車からさっきと同じものの触手が伸びている。
一度逃したことから学習したのか、今度は全身が出てきた。

「なんでこんなことばっかり…!?」

手にどんどん巻き付いてくる触手が痛い。
ガーゼに血がにじむ。


その触手の持主である怪物が私に飛びかかってきてもうダメだと目を瞑ったとき。

誰かに体を突き飛ばされた。

「Aちゃん危ない!!」

地面に転がったけど、庇ってもらったおかげで痛くはない。

そしてその怪物、ミラーモンスターは近くにあったガラス窓の中に入り姿を消した。


「Aちゃん怪我は!?」

その顔を見て、この状況下ながら嬉しさが湧き上がってきた。

「城戸さん!」

私を助けてくれた人物、城戸真司さんに力一杯抱きつく。

「怖かった?…って、Aちゃんに限ってそんなことないか」

私を抱き上げて辺りを見回す城戸さん。

「ごめん、2回も逃がしちゃったな…」

そのままバイクまで私を担いで、自分の後ろに乗せた。
2回ということは、さっき助けてくれたのも城戸さんのようだ。

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デリート(プロフ) - しおんさん» ありがとうございます。最近ビルドの方しか更新できていませんが、絶対に完結まではたどり着かせます! (2018年8月27日 20時) (レス) id: d5c354ea8b (このIDを非表示/違反報告)
しおん(プロフ) - 文章も表現も凄く上手くて一気に読んでしまいました!笑アンクとのやり取りがたまらなく胸きゅんします!更新楽しみにしてます!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 42e4f273a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:デリート | 作成日時:2018年2月15日 18時

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