84話 ページ38
さて、どうしようか。
女の子が人質にとられている以上下手な真似はできない。しかもお店の中の更に狭い空間の中。動けばすぐに気づかれる。
かといってこのままどうすることもできないというのも悔しい。
｢そこの脱獄犯の人、名前何でしたっけ？｣
名前を忘れてしまったので、のんびりと聞いてみる。
のんびりと聞いてみたのだが。
｢人質は黙ってろ。俺をイライラさせるな｣
男は無意味にピリピリして答える。
カルシウムをちゃんと摂取しているのか心配だ。
｢銃さえなければ…｣
小声で文句を呟いた。
素手なら失敗覚悟で飛び込むこともできる。
しかし、銃を持たれていると女の子に危険が及んでしまう。
(あの人に犠牲になってもらうしかないかな…)
男は北岡さんという名前を出した。
北岡さんといえば、城戸さんを刑務所に閉じ込めようとした｢黒を白に変える弁護士｣だ。
会ったこともあるし、話したこともある。
北岡さん(あの悪徳弁護士野郎)さえ渡せば人質は解放してくれるらしいのだ。
あの人には嫌な思い出がある。仕返し程度に思い知るがいい。
そうほくそ笑んでいると、シャッター音(？)がどこかから聞こえた。
男が掴み上げたその人物は…
(城戸さん！？)
城戸さんが男に首を絞められている。
｢城戸さん！！｣
｢Aちゃん…！｣
そうして人質に城戸さんが加わった。
♠♥♣♦♠♥♣♦♠♥♣♦
｢Aちゃん…OREジャーナルにいてって言ったのに…！｣
｢私は城戸さんが思っている程柔じゃないよ。言っとくけど自惚れじゃないですから｣
私を心配しながらも怒る城戸さんと、ついてきたことへの反省の欠片もない私。
｢Aちゃんを危ない目に合わせたくないんだよ。頼むからこんなことやめてくれよ…！｣
私の肩を揺らして城戸さんが懇願する。
必死な城戸さんを見ていると、少しだけ罪悪感が湧いてきた。
｢城戸さんが私をそこまで心配してくれる理由がわからない…。それはわからないけど、私だって城戸さんが心配だから｣
何度も私を命懸けでも何でも守ってくれた。助けてくれた。
理由はわからなくても、その行為に悪意がないことはわかる。
それほどに城戸さんは単純で、純粋だ。
｢ごちゃごちゃ何言ってんだか知らねえが静かにしろ！！｣
場所を忘れて口喧嘩をしていた私達に男が怒鳴る。
女の子は不安そうに城戸さんを見ていた。
(北岡さんが来れば逃げ出す隙はできるはず)
あの女の子も助けてあげたい。
脅されて怯えるその子の姿は、あまりにも自分に似ていたから。
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デリート(プロフ) - しおんさん» ありがとうございます。最近ビルドの方しか更新できていませんが、絶対に完結まではたどり着かせます！ (2018年8月27日 20時) (
レス) id: d5c354ea8b (このIDを非表示/違反報告)
しおん(プロフ) - 文章も表現も凄く上手くて一気に読んでしまいました！笑アンクとのやり取りがたまらなく胸きゅんします！更新楽しみにしてます！！ (2018年8月27日 20時) (レス) id: 42e4f273a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年2月15日 18時
