83話 ページ37
机の後ろに隠れて様子を伺う。
小さな女の子が人質にされていて、その母親らしき女性が悲痛な声をあげていた。
｢その子だけは離してください！！｣
相手は女性の懇願を全く聞き入れる様子がない。
｢北岡を呼べ。そうすれば人質を助けてやる｣
携帯で話しながら男は笑う。
(どうしてこうなったかな…)
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｢Aちゃんは危ないからここにいて！｣
改造作業の片付けをして部屋に戻ってくると、城戸さんが中から飛び出してきた。
｢危ないって何が…って城戸さん！？｣
事情を把握し切れないまま城戸さんは行ってしまう。
｢編集長さん、どうしたんですか城戸さん。令子さんもいませんけど…｣
随分と慌てた様子だった。
私が自分の作業をしている間にいったい何があったというのか。
パソコンで何かを打ち込んでいる奈々子さんと編集長さんを見やる。
｢脱獄犯が出たとか何とかで令子から連絡が来て、城戸も今取材に向かってるんだよ｣
時計を見ると、最後に見たときから2時間程経っていた。
｢げ｣
そういえば途中でお昼ご飯の時間だから休まないかと言われたような気がする。
あともう少し、あともう少しと言っている間にひとり食べ損なってしまったようだ。
一通り片付けが終わった部屋(食器を除く)を見て、作り笑いをしながら扉へ向かって一歩下がる。
｢えっと…、私買い物に行っていいですか？少し足りない部品があって…｣
部屋を出ようとしたら当然のごとく編集長さんに止められた。
｢でも今はやめといたらどうだ？さっき言った通り脱獄犯なんてものがうろついているわけだし｣
｢大丈夫ですよ。そんなに遠くないですし。
すぐに帰ってきますから食器は置いておいてください｣
有無を言わせる時間もないほど素早く部屋を飛び出した。
部品を買うだなんて真っ赤な嘘だ。
この街の工具屋さんなんて私は知らない。
｢こんなこともあろうかと、奈々子さんのパソコン見といてよかった！｣
脱獄犯がいる場所は大体わかる。
走っていくような距離じゃないけど、がむしゃらに慣れない街の中を走った。
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こうして思い返してみると、どれだけ自分が馬鹿なのかを嫌という程思い知る。
運よく目的地じゃないところで城戸さんを見つけたと思ったら、脱獄犯に人質にされました、なんて。
お兄ちゃんにだけは絶対言わないでおこう。外出禁止になんてされたら堪らない。
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デリート(プロフ) - しおんさん» ありがとうございます。最近ビルドの方しか更新できていませんが、絶対に完結まではたどり着かせます！ (2018年8月27日 20時) (
レス) id: d5c354ea8b (このIDを非表示/違反報告)
しおん(プロフ) - 文章も表現も凄く上手くて一気に読んでしまいました！笑アンクとのやり取りがたまらなく胸きゅんします！更新楽しみにしてます！！ (2018年8月27日 20時) (レス) id: 42e4f273a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年2月15日 18時
