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74話 ページ26

できればなるべくこの姿の始には会いたくなかった。

「何故お前はここに来た」

以前お兄ちゃんを傷つけたその姿で始は私と話す。

「虎太郎が心配だったから…。
まあ、何もできなかったんだけどね」

見ているだけで何もしないのなら、いっそいない方がマシだ。
自嘲気味にそう言うと、カリスは興味なさげに違う方向を向いた。行ってしまう。

「待って!」

呼び止めるとカリスは再び私を見る。
深呼吸して、意を決してカリスの手を掴んだ。

「あなたはアンデッド?仮面ライダー?相川始?」

カリスは私を見下ろす。
アンデッドだから嫌いなんじゃない。お兄ちゃんを傷つけたから嫌いなんだ。
でもお兄ちゃんが始を助けたとき、始はお礼を言ったと聞いた。今も虎太郎を助けてくれた。

「それとも天音ちゃんと遥香さんの家族?」

カリスが、天音ちゃんの前での始が、何を思って行動しているのか。

「ねえ答えて。あなたは誰」

私はこの人が何なのか見極めたい。

カリスはしばらく黙っていると、私の手を振りほどいて歩き始めた。

「待って、お願いだから答えて…!」

そう懇願したが、振り向きもせずにどこかへ行ってしまった。

「始…」

追いかけようとして足を止める。
今はカリスのことより、虎太郎とお兄ちゃんだ。


「虎太郎、大丈夫!?」

大丈夫ではないだろうが、倒れている虎太郎に駆け寄る。

「なんでここにいるのさ…」

元気がないけど意識はあるようだ。大きな怪我もなさそうだし、帰って休めばきっと元気になる。

「念のためにって思って見張りに来たんだけど、助けてあげられなくてごめんね」

虎太郎を運ぼうと引っ張るけど、成人男性の体を15にも満たない女子供である私が動かすのには流石に無理がある。虎太郎自身が動こうとしなければどうにもならない。

「虎太郎、ぼーっとしてないで立って。私ひとりじゃ運べないから」

髪を引っ張ったり顔をつねったりするが、虎太郎は暗い顔で下を向いているだけ。

お兄ちゃんがアンデッドを封印すると、立ち上がってそっちの方へと歩いていく。

「ちょ、虎太郎!」

私もそれについて行った。
様子がおかしい。吉永みゆきに騙されたことがそんなにショックだったのだろうか。

「虎太郎!ってAまで…」

お兄ちゃんが私に気づいた。
そして虎太郎に大丈夫か、怪我はないかと聞く。
これで虎太郎は安全だ。お兄ちゃんも、無事アンデッドは封印した。

虎太郎はお兄ちゃんに任せて、植物園の中でカリスのを探す。

「まだいるかな…」

呟くと、離れた場所からお兄ちゃんと虎太郎を見ているカリスの姿があった。

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デリート(プロフ) - しおんさん» ありがとうございます。最近ビルドの方しか更新できていませんが、絶対に完結まではたどり着かせます! (2018年8月27日 20時) (レス) id: d5c354ea8b (このIDを非表示/違反報告)
しおん(プロフ) - 文章も表現も凄く上手くて一気に読んでしまいました!笑アンクとのやり取りがたまらなく胸きゅんします!更新楽しみにしてます!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 42e4f273a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:デリート | 作成日時:2018年2月15日 18時

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