73話 ページ25
携帯の画面を見ながら道を走る。
「発信器と盗聴器、上手く機能してよかった…!」
地図上のチカチカと点滅している地点が虎太郎のいる場所だ。
デートの様子を見るというのは嘘で、本当は虎太郎がアンデッドに何かされないか見張っておくのが目的だ。
アンデッドは別に一体いたらしいが、もし吉永みゆきもアンデッドだと判断したらお兄ちゃんに連絡する。
「これでも一応ブレイドの補佐役だもん」
烏丸所長に頼んで、BOARDではお兄ちゃんの手伝いをさせてもらっていた。
その過程で国語と数学、機械いじりを教わった。だからこうして発信器やら盗聴器やらを改造できる。
植物園に到着して、物陰からふたりを探す。
「…いた」
虎太郎と吉永みゆき。
少しでも変な動きをすれば、お兄ちゃんを呼ぶ。
しばらく見張っていると、外に人影が見えて思わず息を飲んだ。
「お兄ちゃん…?」
アンデッドとおぼしき男の人と何か話している。まさか。
虎太郎がお兄ちゃんに気づくと吉永みゆきがアンデッドの姿になり、植物を操って虎太郎の首を締め上げる。
「ベルトを置け!!」
外ではお兄ちゃんが言われた通りにしようとして虎太郎を見ていた。
吉永みゆきだったアンデッドはどういうことかと問う虎太郎をあざけ笑う。
こんなの酷い。
「置くな!置いちゃダメだ!!」
虎太郎が必死にお兄ちゃんに戦うように言うが、いらないことを言わないように更に首を絞められる虎太郎の姿を見て、お兄ちゃんはベルトとカードを地面に置いた。
出ていこうにも今何かすれば捕まって私も人質にされるだけなのは目に見えているから、何もできない。
そのとき、虎太郎が悲しそうに呟く。
「何故僕なんかのために…」
その疑問があまりにも馬鹿馬鹿しくて、思わず飛び出そうになった。
(馬鹿!!友達だからに決まってるでしょう!?)
幸いまだ私は誰にも見つかっていない。
今動けるのは私だけだ。
「橘さんを…!」
携帯を開けたとき、誰かがアンデッドを攻撃した。
「カリス…」
違うのは見た目だけなのに、その姿を見ると心の奥底で小さな怒りがふつふつと湧いてくる。
アンデッドが虎太郎を盾にするが、カリスはお構いなしに矢を放った。
「避けろ!」
その言葉に反応して虎太郎が頭を何とか動かす。
アンデッドに攻撃が当たり、虎太郎が解放された。
虎太郎に助けたわけではないと言いお兄ちゃんのところに行かせ、元吉永みゆきのアンデッドは逃げた。お兄ちゃんはもう大丈夫だ。
安心して物陰から姿を表す。
「カリス…ううん、始」
私はこのアンデッドと向き合わなければならない。
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デリート(プロフ) - しおんさん» ありがとうございます。最近ビルドの方しか更新できていませんが、絶対に完結まではたどり着かせます! (2018年8月27日 20時) (レス) id: d5c354ea8b (このIDを非表示/違反報告)
しおん(プロフ) - 文章も表現も凄く上手くて一気に読んでしまいました!笑アンクとのやり取りがたまらなく胸きゅんします!更新楽しみにしてます!! (2018年8月27日 20時) (レス) id: 42e4f273a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:デリート | 作成日時:2018年2月15日 18時