44話 ページ46
もう今は"することがない"ので、午前中は部屋で栞さんに現状報告をすることにしている。
｢ねえ、アンクって私のこと嫌い？｣
ずっとソファでiPadや携帯端末を触るアンクに聞くけど、答えてくれない。
背中を向けて話している私も大概だけど。
｢この間のあれが嫌がらせの一環だとすると、そうなるかなって｣
携帯でメールを打ちながらそう言うと、後ろでアンクが降りてくる音が聞こえた。
｢じゃあ理由を教えてよ｣
文句を言おうとしていることはわかっている。
私だって本気で嫌がらせだなんて思っていない。
｢｢お前が服を掴んだ｣ってことは、私の為ってことだよね｣
そこまでは理解できる。
でもアンクが私の為に利益なしで何かしてくれるとは思えない。
そう思っていると、私の正面に座った。
｢…お前には世界がどう見える｣
窓の外を見ながら言うアンクに表情はない。
｢どうって…普通だよ｣
携帯から目を離して、私も窓の外を見る。
いつもと変わりのない夢見町の町。
｢普通、か｣
一瞬悲しそうな顔をしたと思ったら、すぐに元に戻った。
｢…うん｣
気のせいかな。
｢お前が見てきたもので一番美しい景色は何だ？｣
アンクは窓の外を見て動かない。
アンクには世界はどう見えているのだろう。
｢お兄ちゃんと行ったお花畑｣
子供っぽいけど、本当に綺麗だった。
｢白い花がいっぱい咲いてて、その中にまだ残ってるコスモスが何本かあったんだけど、それで花冠作ったんだ｣
楽しかった。
閉じこもってばかりの私に外に出るようにと、お兄ちゃんがつれて行ってくれた。
｢能天気に笑ってたんだろうなぁ｣
口の端をわざとらしくつり上げる。
嫌味たらっしいったらない。
｢なんでそう思うの｣
能天気とは心外だ。
そんな馬鹿っぽい印象を持たれているのならなんとか訂正したい。
｢お前はその"お兄ちゃん"の話になると馬鹿みたいに笑うからな｣
アンクがやっと私を見て、私の持っている携帯を指差す。
何度かアンクにお兄ちゃんの話をしたことはあった。
でも本当に少しだけ。
あんまり喋るとうっかりライダーのことを話しそうだから、なるべく避けている。
｢…ごめんね｣
私はアンクのことを知りたいと思っているけど、私自身のことは何も教えない。
ギブアンドテイクが成り立っていない。
アンクも私が何かを隠していることは知っている。
知ってるけど、私が答えないことをちゃんとわかっているのだ。
だから聞かない。
｢……｣
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ゆきみだいふく - ザヨコー (2018年5月24日 20時) (
レス) id: 45dbd6a8fa (このIDを非表示/違反報告)
デリート(プロフ) - 藍澤 水希さん» ありがとうございます。自分でも一期と二期、しかも小説まで混ぜるという無茶苦茶の意味がわからなくなってきていたので、喜んでいただけたのなら安心しました。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4a5d5c82f4 (このIDを非表示/違反報告)
藍澤 水希(プロフ) - 剣もオーズもすごく好きなので私に凄く嬉しい作品でした……！！書き方もお上手ですし、小説版の話を入れているのもとても良いと思います！更新頑張ってください！ (2018年2月12日 23時) (レス) id: 7b0e10bb72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：デリート | 作成日時：2018年1月31日 22時
