この町を嫌った少年 ページ4
今日もこの町は、
この家はうるさい
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる男
アンアンと喘ぐ女
酒と、大人のにおい
チッと舌打ちをして起き上がる
「あら宵ー、やっと起きたの?準備して母さんの手伝いしてちょうだい」
下の部屋から母さんの声が飛んできた
ギシギシと音をたて階段を降りると、たくさんの男がいた
そのうちの数人がボクに近づいてくる
「宵ーちゃあん、見てわかるようにおじさんたち、遊べる女他の人に取られちゃったんだよー」
「ねぇ、相手してくれない?高く払うからさぁ」
酒臭くて仕方がない
ぐい、とおじさんたちを押し退ける
「残念だけどボク、男だから」
「宵ー、一度くらい相手してみたらどうなの?」
「第一、ボクに変な趣味はないし、母さんは金さえ貰えればいいんだろ?」
「宵ー」
「なんでボクはこんな、遊女の子供として産まれてこなきゃいけなかったの?!」
気づいたら叫んでいた
叫んで、ハッとした
母さんがないていた
身体中から、血の気が引いてゆくのがわかった
遊女、ボクの母さんは遊女だ
でも母さんは、ボクを大切に育ててくれた
なのにボクは
怖くなり、家から飛び出した
少し行った所に、劇場があった
「君、そこの金髪の君」
「は、はい?」
自分のことだと気づくのには時間がかかってしまった
よく見ると、この劇場の看板女優『リッカ』だった
赤いドレスを身にまとい
柔らかな髪にはバラの髪飾りがついていた
「ねぇ君、誰かとケンカしたの?それともいじめ?」
「母さんと、ケンカしたんです」
「あら、そう…逃げてきたの?お母さんから」
「はい、そうなります」
「じゃあ、早く帰ってあげなさい」
「でも」
「大切な人ほど、大事にしたい人ほど、自分の前から消えていくの。早く、帰りなさい」
どこか寂しそうに彼女は言った
「カモミール、花言葉は仲直り」
小さな花束を渡された
カモミール、かぁ
「ありがとうございます」
「いいのよ…あの、もし赤いミニドレスにバラの髪飾りをしたビジュって人を見つけたら、教えてちょうだい」
「わかりました、では」
家へと走った
母さんが待ってる
ごめんなさい、って言わないと
「よう、お嬢ちゃん」
「え…?」
背の高い男が二人、ボクの前に現れた
「菓子をかってやろう、こっちへおいで」
誘拐だ
急いで来た道を引き返した
と、強く腹を蹴られる
意識がもうろうとしてきた
ボクはもう、
母さんには会えない
それが遊女の掟だから
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