102限目 ページ8
「ねえ知ってた？」
占い学の時間、僕はペアを組んだセオドールに声をかける。彼は無言で続きを促した。目線は変わらず教師であるトレローニー教授の方を向いていたけれど。
「どうやら僕の運命はこれから最悪のようだ。明日にはあるはずのないメガネをなくして、その次の日は喧嘩に巻き込まれる。それから次の日は罰則を受けて、そして友人と別れを告げる。どう見たって最悪だ」
「別れを告げられる友人がいるの？」
「まさか。僕には君もダフネもかけがえのない、絶対に別れなんて告げられない友人だし、ドラコも弟みたいなもんだし、ザビニもムカつくけど友人だ。クラップやゴイルだってもうちょっと勉強をしたほうがいいと思うけど、ぶっちゃけプチ授業はもうしたくないけど、それでも友人は友人」
「……」
嫌味を無視してそう言った僕に、セオドールは反応すらせずに前を見つめる。どうしたのだろう、ずっとトレローニーばかりを見ているけど、もしかして彼女に惚れたんだろうか。
ぼんやりとトレローニーを見つめる彼を見ていると、視線を感じたか彼がちらりとこちらを向く。
「何？」
「いや別に。僕も今週は凶運みたい」
「え」
「明日は降るはずのない雪に埋もれるようだし、その次の日は喧嘩に遭遇して友人を差し出さないといけないみたい。その次の日は甘いものを貰うけどそれを押し付けれる相手がいなくて、その次は、やっぱり僕も友人と別れを告げなきゃいけないみたい」
「……えっ、どこまでが本当なの？」
「さあ、たかがティーカップ占いだし、当たるわけがない。君は間に受けすぎなんじゃないの？」
「いや、そこまで間に受けては……たかが占い学だろう」
そこまで言った後に、セオドールの後ろにギョロリとした眼を持つ女性が立っていた。説明する必要もないだろ、占い学のトレローニー教授だ。
「たかが？そう仰られましたか、Mr.ブラック」
サーっと血の気が引いて行く。先程セオドールがトレローニーをずっと見つめていたのは、タイミングを伺っていたのか。ちらりと彼を見れば、彼は何事もないように自身の教科書を開いていた。
「いえ、先生。何も」
「ええ、良いのです。そう思うのも仕方ないわ。まだまだ始めたばかりだもの。これから親しんでいけば良いのです。カップを見せていただける？」
そう言われて、僕はティーカップに手をかけた。
しかし哀れにもそのティーカップは、僕の手を離れ地面へと落ちてしまう。
「あ……」
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作者名：あんころころもち x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年5月13日 9時
