120限目 ページ28
「形態模写妖怪です。先生」
宗セオドールが言うと、ルーピン先生はニコリと微笑んだ。
「その通りだ。ありがとう、ノット。わたしたちが最も怖いと思うものがこれだ、と判断すると、それに姿を変えることができる。だから中の暗がりで座り込んでいるポガートはまだなんの姿にもなっていない」
その説明を聴きながら、僕の怖いものはなんだろうと考える。苦手なものといえば、猫。小さい時に一度引っかかれてから、それ以来近づいていない。そう言えばハーマイオニーは猫を飼い始めたらしい。できればその猫にだけは近寄りたくないなと、ぼんやりと考えた。
他には、当然ハーマイオニーから「嫌い」と言われるのは怖いが、でも僕にとって、それが全てではない。猫も一緒だ。彼女のことは、その、大好きだけれど、ここで指す「恐怖の対象」とは少し違う気がした。
だとしたら、怖いものはなんなんだろうか。怖いもの、怖いもの。ふと、ルーピン先生の声をBGM僕は考える。もしも例のあの人が生きていたとして、彼の怖いものとはなんなんだろうか。彼の最も恐れた魔法使いはダンブルドアだということを知っていたけれど、でもなんとなく、そうじゃない気がした。去年、彼の記憶は僕に言ったのだ。「僕と君は似ている」と。僕なら、本物の恐怖の対象をそこに置くことはないと思った。
「……」
「それじゃあ見本を見せてもらおうか……グリーングラス。前に出てくれるかい?」
ルーピン先生の言葉に、ダフネは一瞬顔をしかめて、だけれど前に出た。左に杖を握って、先生を見た。
「本番でやってみるかい?それとも、何か手助けをしようか」
「……いえ、やってみたです」
「そうか……じゃあ、開けるよ。3、2、1……」
掛け声とともに先生は、扉を開ける。ダフネは相変わらずまっすぐとそれを見つめていて、だけれど一瞬、ほんの一瞬だけ、不安気に顔をしかめた。その瞬間扉は一層大きな音を上げて動き、数秒後に静かになった。
カタッと音がして、赤い靴を履いた足が顔を出した。かつ、かつ、そしてようやく、その顔を表す。
「……っ」
静かに、ダフネの音が鳴った。みんなわけがわからず、その光景を見ている。これの、なにが恐ろしいというのだろうか。
そこにいたのは、5、6歳の小さな女の子だったのだ。
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作者名:あんころころもち x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月13日 9時