休憩時間 ページ22
サンサンと太陽の輝く夏の日。少年はぼんやりと流れる雲を見ていた。(もちろん違ったのかもしれないが、少なくとも私にはそう見えた。)
名も知らぬ少年は絵画から飛び出た天使のように美しく、そして聡明だった。しかも身に纏っている服は一介のサラリーマンである私にでさえもわかるくらいの一級品で、もしかするとイギリス王邸の隠し子ではなのかと疑うほど。そんな明らかに貴族である少年が、キングス・クロス駅の薄汚れた赤煉瓦に縋っている。
もしかすると家で意地悪な継母に嫌がらせでもされて逃げてきたのだろうか。などとどこかで見た映画のようなことを考えていると、前方から女の子がダッとかけてきた。女の子は瞳に涙を溜め、キョロキョロとあたりを見回している。
迷子か……。しかし他人である彼女に構う義理などなく、ただ見つめていると、彼女は貴族の少年の横に立った。
「なにしているの?」
少女が口を開く。
「……なにもしていないよ」
「なにもしていならちょうどいいわ。ねえ、ママとパパをさがすのをてつだってちょうだい」
なんと。少年はびっくりしたように彼女を見つめ、だけれど首を横に振った。
「だめだよ。おばあさまにはやくかえってきなさいっていわれてるもの」
「ちょっとだけ。ちょっとだけでいいの」
「それに、おばあさまにマグルとはなしたらダメってきつく言われてるんだ」
まぐ……なんと言った?彼のお祖母様の言うマグルは、イギリス人という意味なのだろうか。だとすれば外国の貴族様なのかもしれない。
「マグルってなあに?」
少女が問う。
「きよくない血のことだよ」
「きよくないってどう言う意味?」
「……じゅんけつじゃないってことだよ」
「じゅんけつってなあに?」
「…………さあ、しらない」
清くない血、「マグル」と言うのが差別用語だと言うことを私は理解する。だとすればマグルというのはくり毛を意味するのだろうか。それとも天パ?もしかすると少しだけ出ている歯かもしれない。
「……きみ、おなまえなんていうの?」
「……ぼくはAだよ。A・ブラック」
「へぇ、私はね、はー……」
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作者名:あんころころもち x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月13日 9時