検索窓
今日:5 hit、昨日:7 hit、合計:5,365 hit

ページ ページ31

「お願いいたします」

「……」

「ルシウス様。私はどうなっても構いませんわ。だから、あの子だけは、どうか」

「わかった。言わないことを約束する。確かに、あの小さな子に罪はない」

「ありがとうございます」

「ただし、それ以外のことで父を欺くなよ」


 そうすれば、彼女はにこりと微笑んだ。まるで周りに花が飛んだような、まるで人形のような、作り物のように美しい笑みを浮かべる。


「もちろんですわ。命に変えて、お約束いたします」


 その笑みと、その言葉に、やはりマリア・シャフィクの忠誠心は本物だと思うのだった。


「お姉さま、お菓子を持ってきました」

「まあ、ありがとう。フラン。いい子ね」


 優しい手のひらに撫でられたフランは、ちらりと私を見上げる。そしてすぐにマリアの後ろに隠れた。


「あ、あの、ルシウス様」

「なにかね」

「エイブリー婦人が、これがルシウス様がお好きだと教えていただいて」


 小さな手指を動かして、皿のはじにあるチョコレートケーキを指差す。それを見て、私は思わず眉を顰めた。


「まあ、フラン。ルシウス様はこのチョコレートケーキがお嫌いなのに」

「いや、構わない」


 顰めた眉をすぐに隠して、私はそれに運んだ。

 放っておけば、すぐに大人の嫌な部分に飲み込まれてしまいそうなこの小さな少年を、守ってあげようと思ったからだ。


「ありがとう、フラン」

-Side M-→←前ページ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
18人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あんころころもち | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年8月7日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。