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「やっぱりお礼をしないと」

「いいの。私が勝手にやったことだから」

「それでも私はそのおかげでとっても助かったのよ。大丈夫、私はお金には困ってないわ」

「私だって別に困ってない」


 そう言っても引かない彼女についに折れ、私は彼女にカエルチョコを奢ってもらうことにした。

 1箱でいいと言うのに、5箱だと彼女は譲らず、結局4箱も買わせてしまったのだ。

 正直、下心もあったわけだし、なんだか申し訳ない。意外に頑固な人だと、ぼんやりと考えた。


「ねえ、えっと……」

「ふふ、マリアでいいわ。ミドルネームなんて、いつもは名乗りはしないもの」

「マリアは、シャフィク家の……」


 そこまで言って、なんと言っていいやらわからず口を閉ざす。すると彼女はやはりにこりと微笑むのだ。好奇心で聞いてしまったけど、やっぱりこれは失礼すぎることだっただろうか。


「ええ、そうよ」


 その笑みはどこか悲しげであった。

 シャフィク家といえば、3年前に闇の魔法使いによる惨殺事件の被害にあった一族である。確か、父親と、長男次男、長女、そして産まれたばかりの子供まで、見つかった時にはひどい状態であったそうだ。

 その事件があってからは、元はマグル擁護派であったにもかかわらず、シャフィク家は純血主義に転換している。


「……ごめん」

「ううん。いいの。覚悟はもうしてたもの」


 そう言われてもなんだか申し訳なく、持っていたカエルチョコを彼女に渡す。やはり彼女は受け取ろうとはしなかったけれど、それでも無理やり渡しておいた。そもそも彼女にもらったものなのだけれど。


「メアリアは、確かお姉様と、お兄様がお二人いるのよね」

「うん。口うるさいモリーと、女の子が大好きなギデオン。それから無口なフェービニア」

「へえ、楽しそうなご家族ね」

「……あー、うん。まあ」


 やはり気まずくなって目をそらすと、そんな顔しないでいいのにとクスクス笑う。それでもやっぱり気まずくて、私は曖昧に笑うのだ。マリアは続ける。


「寮は、どこに入るの?」


 私はマリアの問いに答えようと口を開けた。

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作者名:あんころころもち | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年8月7日 0時

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