【ハリーポッター】とある《マリア》のはなし。【親世代】 (ページ30)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:5,361 hit

ページページ30

マリアは続ける。

「ごめんなさい。フランには聞かせたくない話なのです。フランは、先ほど申し上げました通り男児ですわ。そして我が家の男児は、生まれ次第殺されてしまうでしょう」

「……」

「あんな、あんなくだらない父親の、汚らしい思想を掲げ、濁ってしまった血など、継いでいいわけがないのです。ですが、それでも、生まれたばかりのあの子を殺すことなんて、私たちは考えられなかった」

　私は何も言わずに少し潤んだ彼女の瞳を見つめていた。

「だから、女の子として育てることを決めたのです。ご覧の通り、あの子はタキシードは持っておりませんし、青いおもちゃ緑のおもちゃをも与えてはおりませんわ。どうか、どうかお見逃しください」

　視線を、フランの方へ動かす。そうすればお皿を持ったまま、貴婦人たちにお菓子を取ってもらっているフランの姿が見えた。

　黄色い髪に青い瞳。まるで天使のような容貌をする美しい少女。と言っても、今この時、彼女は彼であることが判明したのだけれど。

「私はたとえ父の血を継いだ男児だとしても、あの子に罪はないと思うのです。殺されるほどの罪が、どうしてあの子にあるでしょう」

　懇願する彼女の瞳に、私はどうすればいいのかわからなかった。マルフォイ家の息子として、このことを父に言わないわけには行かないが、友人として、そして何よりも一人の魔法使いとして、人を殺すことを薦めるのには反対なのだから。