【アニメ】個人的な書きたかったシチュやジャンルを書きまくる短編集

9.文スト・国木田独歩・教え子・シリアス ページ31

珈琲の香りが鼻に伝わる。
新聞をみる振りをして近くにいる屈強な男の動向を探る。



ーやはり黒か...



キョロキョロと落ち着きがない瞳孔、忙しなく上下させ、貧乏揺すりを繰り返されている足。
誰がどうみても«ぎこちない»男の姿が扉越しに見えていた。



もうこれで運び屋は掴めた様な物だ。
それから其奴に頼んだ犯罪人の部下が取りにでもくれば俺の
仕事は此で完了して、また横浜が平和な街へと繋がる訳だ。



そんな理想と妄想をごちゃ混ぜにした思考を頭に描きながら
相手の行動を見計らっていた。



ー基本的になるべく市民の皆様に迷惑がかからないようにしたいが、
　あらゆる条件と人数を考えておくと...



「あれ、国木田先生じゃぁないですか。

偶然ですねー。お久しぶりです。

お元気でしたかー？」



作戦を考えていた時に、ウエイトレス姿の女性が背後から声をかけてきた。
しかもその声や雰囲気は見知った物で、
しかも名前付けで呼ばれているために無視などは
出来ない状態であり、少しばかり
頭の中が真っ白になってしまった。



「...ｯ...ぁあ、元気だったよ。

奇遇だな、村山。」



相手を睨むくらいに凝視していた国木田独歩は、
自分自身が見られていることに気がつかなかった。
いや、彼女が仕事中でウエイトレスの制服を着ていたために
意識が持っていかれた、とでも言うべきか。



屋外の洒落たパラソル型のカフェという見晴らしが良く
彼方には鏡もあり、どこから敵の下っぱが出てくるのか
分かる優良な席には１つのテーブルと２つの椅子が置いてあり、
彼女はその空いていた席に腰をおろした。



「いいのか村山。お前まだ仕事中だろ。」



心配するように、気遣うように話しかける。
先程は少しばかり取り乱してしまったが、声が震えぬように気を付けて
話しかけた。
そんなのをお構いなしに彼女は笑ってこう答えた。



「どうせ客時がひている時間帯ですしね。

それにここの、私を雇って下さっているオーナーさんなんて

こんなにも若いのに働いているなんて…と色々

気を利かせてもらったりしているので案外大丈夫ですよ。

昔の恩師がいました、と言ったら休憩くれました。」



それを聞いて少しばかりならばはなしを聞いてやろう、と
未だに姿を表さない、あのずんぐりむっくりな
男を横目で観察しながら、昔の大学の教え子の話に
耳を傾けていた。

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