今日の二人【QK】 (ページ18)

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彼と示し合わせたわけでもないのに、待ち合わせ時間の少し前に、待ち合わせ場所ではないところで出会えた。

それが私には、奇跡のように感じられて仕方なくて。
一見すればくだらない考えかもしれないが、この本がそうさせてくれたのだと信じて疑わなくて。

その思いが、彼にも伝わったらしい。

少し何かを考えた後、彼はふいに手を伸ばして私が抱える本を奪った。

あ、と声を上げる私に、彼はこう告げる。

「今日の記念だっていうなら、俺にプレゼントさせて」

まさか著者本人が自著をお買い上げ、なんてそんなことがあっていいのだろうか。

『いやいや！いいです！自分で買いますから！』

慌てて彼から本を奪い返そうとするが、彼が手に持った本を高く掲げたせいで、いくら背伸びをまったく届かず。

「いーから。お兄さんにカッコつけさせなさい」

彼はそう言ってスタスタとレジへと向かって行く。

私はぽかんと口を開けたままその場から動くこともできなかった。
だってまさか、そんなことになるなんて。

約2分後、レジから戻ってきた彼が私にはい、と本の入った紙袋を手渡してくれた。

未だ呆然としたまま、無言でそれを手にする私。

「レジのお兄さんにめっちゃ二度見されたわ。“え！？本人やん！”みたいな。なんか自分大好きみたいな感じでめちゃはずかったんだけど」

彼は恥ずかしいというよりも、気まずそうな顔をしていて。

そんないたたまれない思いをさせてしまったことに申し訳なく思いながらも、彼の大きな優しさに対して愛しさが溢れてきて。

今度はその紙袋を、私は両手に抱えて力強く抱きしめた。

『ありがとうございます』

にこ、と彼に微笑むと、彼も気まずそうな顔を一瞬で嬉しそうな顔に変えて。

「おう」

と言いながら私の頭をくしゃりと撫でてくれたのだった。