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笑わない君に、恋をして。8 ページ8

『もう演者としての川上さんは見られなくなってしまったんですね…』

涙を拭いながらも、私は胸の中で燻る哀切を隠し切ることはできなかった。

「わざわざ画面越しじゃなくても、Aならいつでも会えるやん」

川上さんは困ったように笑う。

『わかってはいるんですが、涙が止まらなくて…』

別に今生の別れではない。
Twitterを開けば、オフィスに行けば、いつでも会うことができる。

それでも私は、動画の中であなたが見せる笑顔が大好きだった。
普段見ることはできない、困ったようにとか少しだけとかではなく、全開の笑顔。

あなたのその顔が見たくて、いろんなことをして頑張ってみたけど、なかなか上手くいかなくて。

好きな人に笑いかけてもらうことがこんなに難しいことだなんて、今まで生きてきて初めて知った。

また同時に、私にだけは笑いかけてくれないあなたが、私のことを何とも思っていないということも思い知らされた。

嗚咽が漏れないよう、泣き顔を見られないよう、私は顔を両手で覆った。

『ごめんなさい、ちょっと止まりそうになくて…先に行ってください』

終電の時間が迫っていることは分かっていたが、どうしても涙を止めることはできなかった。

ひたすら泣き続ける私に呆れて、いっそ置いて行ってほしいとさえ願った。

だが、その願いはふわりと優しく訪れたぬくもりによって叶わないことを知る。

彼に、抱きしめられていた。

あまりの衝撃に涙が止まってしまい、私はそのままぴくりとも動くことができない。

「泣いてもええけど、俺の胸の中で泣いて」

彼が少しだけ緊張したような声で、私の耳元で囁いた。

突然訪れた展開に、私は未だに驚きを隠せない。
ただ、すぐにその行為も彼の優しさによるものだということを感じ取り、再び涙が出そうになってしまった。

『そんなに優しくしないでください…勘違いしてしまいます』

彼は優しいから、私を慰めようとしてくれたのだ。
こんな夜中に私を置いて帰ることはできないからと。

そんな優しさはいらなかった。
馬鹿な私は、すぐに舞い上がって自分の都合の良いように解釈してしまう。

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設定タグ:Quizknock , 川上拓朗 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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Annie(プロフ) - 217さん» ありがとうございます!共感していただけて大変恐縮です…!お話も楽しんでいただけて本当に嬉しく思います。これからも少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします! (2020年5月13日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
217(プロフ) - いつもお話を拝読している者です。いつも楽しく読ませてもらっています…!今回のお話があまりにも自分の気持ちを代弁してくれていたので我慢できずにコメントを書いてます。どのお話もだいすきです。これからも応援しています…! (2020年5月13日 0時) (レス) id: cc2f607952 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09  
作成日時:2020年5月12日 12時

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