【あんスタ】兄嫌いと兄者嫌い【男主】

Episode１７＋晩餐＋ ページ18

衣更をおろす気配もなく、まるで自分の家に帰るかのような雰囲気を醸し出して、自然な動作で衣更の家の鍵を開けて入っていく男、朔間凛月

リビングであろう所に灯されていた明かりが、玄関にまで広がった
おかえりっ！と可愛らしい声が響き、顔を覗かせたのは、衣更にそっくりな女の子
嗚呼、ただいま……舞衣(まい)、と声を掛けた所を見るに、きっと彼の妹さんなのだろう



「……あ、凛月さん、いらっしゃい...というか、おかえりなさい！
えっと……そちらのお兄さんは？」

「うん、ただいま♪ 舞衣ちゃん」

『僕は、瀬名 Aです。お兄さんと同級生で、一緒にアイドルを目指してます！
……舞衣ちゃん、よろしくね！』


少年は後ろ手で玄関の扉を閉めると、そのまま少女の前に跪き、目線を合わせた
これは……と固まる衣更、凛月に対して、平気な顔をしていることから、きっとこれは少年流のファンサービスに近いのだろうか


……と、二人が思考を巡らせている間に、お邪魔しますとあがっていった少年と、舞衣という名を褒められてご機嫌になっている妹の姿をみて、また一つ衣更は溜息を吐き出すのだった





リビングへと衣更、凛月の二人が到着する頃には、テーブルには舞衣が作った料理が並んでいた。あれをとって、これをとって……と舞衣に言われ、Aは言われた通りに手伝いをしていた


「お兄ちゃん、お友達を連れてくるならちゃんと前もって言っておいてよ
...てっきり、お兄ちゃんと凛月さんと私だけだと思ってたから……」

「嗚呼、ごめんごめん。急にな、勉強会でもしようかって話になったんだよ
……でも、いつも多めに作ってるから足りるだろ？」

「まあ、足りないことはないけど……」

衣更は、事の次第をすべて話す気にはならなかった
凛月にしばらくおぶられていたことで、腰は治り、自力で歩けるぐらいには回復できていた


「わぁ〜、舞衣ちゃんの夕ご飯！美味しそ〜〜〜」

凛月が目を輝かせて、真っ先に椅子に腰掛けた
手も洗い、準備万端……早く早くと皆を急かしているかのようだ
朝・昼・夜問わず寝ていて、お昼もまともに食べない凛月が、衣更の家にお邪魔するときだけは、絶対に夕ご飯、そして次の日の朝食をいただいていく

あまり見慣れない光景に少年は、目を見開き、驚きの声を上げた
衣更はもう慣れてしまったのか、呆れたように頬を掻き、少年に座ろうと促した
そうして、４人が席に着いたところで、晩餐は始まったのだった

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