炸裂ゲットシック！ ページ2
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日は西の地平に傾き、宵闇がすぐそこに迫りつつあった。
血のように赤く染まった嘗ての陽を見ながら溜息を漏らすのもこれで何回目だろう。
言い返す言葉も、気力も、私には微塵も残っちゃいなかった。全てが溜息となって意味を持たずに漏れ出ていく中、確かにずっと存在している喪失感、焦燥感、羞恥心。
今日に限って五月蝿い夕日に放っておいてくれ、なんて帰ってくるはずのない返事を期待して呟く。
好んで見ていた筈のこの景色が、麗しい夕日が、今日ばかりはまるで私を責め立てるように五月蝿いのだ。
｢…はぁ…｣
ああ、もう。本当に。
｢……なんで…｣
何かを間違えたことは明確なのだ。ただその何かが胸に突っかかって姿を表そうとしてくれない。
正確には突っかかりを作っているのは自分なのかもしれない。
他人と比べ対人関係が希薄な私でも所属できた奇跡のグループだった。
ただ安心してしまっただけなのだ。
安心とは恐ろしいもので、決定的な落ち度はそこだったのだと今更気付いた。
劣等感の塊だが、否、劣等感の塊故に”一人”とは非常に相容れない。
周りから慰めや噂を立てられるのが苦痛で仕方がない。
そんな偏屈な性格が、ワタシが大嫌いだ。
幸せな人でありたい。
羨ましがられたい。
慰めなんて辞めてくれ。
そんなドス黒い人間味が私の中に常に存在した。
表に出ていたのだろう。時折見せる彼女たちの怪訝そうな表情の理由が分かったような気がする。
我ながら遅すぎる。
彼女たちにバレてしまっているということは、周囲にもバレているのだろうか。
そんなことを考えながら、いつもの倍はかかったであろう下校を漸く終える。
・
｢鏡よ鏡、鏡さん。世界で一番幸せなのはだあれ｣
｢それは貴方よ。貴方は世界一幸せで世界一不幸せな、私の可愛い子｣
家に帰ってから私が日課として行っている一人芝居。
小学の時にやった劇が忘れられず、中学に上がってから今まで毎日欠かすことはない。
目の前にいるのは自分だけれど、自分ではない。
自分では無いが、自分の思った通りに動いてくれる。
こうしているのが何より落ち着くのだ。
｢……鏡よ鏡、鏡さん｣
明日から私はどうすれば良いですか？
｢…鏡よ鏡、鏡さん｣
明日から私はどうやって自分を保てば良いですか？
｢鏡よ鏡、鏡さん｣
どうか私に、逃げ道を。
なんて言ったら笑われますかね。
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作者名：ゆちゃまる(サブ) | 作成日時：2020年10月19日 1時
