第五話 入学式 ページ2
アリアとこそこそ話していると、エレノア先生の視線がこちらを向いているのに気がついて、ヤバいと思って口をつぐんだ、その瞬間、
｢はっくしょーい！｣
とてつもないくしゃみが大聖堂に響き渡り、文化遺産であるステンドグラスを保護する守護壁魔法が連鎖的に発動。驚いて、尻餅をついている生徒もいる。
私達はビクッと体を震わせただけだけど、かなり驚いた。
｢さ、さすが魔導拡声器。くしゃみ一つでこの音とは……｣
そう。今のくしゃみは、前に立っているイグノタス校長のものだ。しかも、魔導拡声器によって十倍拡大されたもの。
｢失礼。昨日からどうもくしゃみが
またくしゃみをしそうだったので生徒達は構えたが、これは不発に終わる。
声は渋くてダンディなのに、色々と危険な校長だ……
｢さて、新入生の皆さん、ケレアレン魔法魔術学校へようこそ。わしはイグノタス･パラス。ケレアレンの校長ですぞ｣
ようやく仕切り直し、校長が語り始めた。
｢この世は、一本の世界樹と、十柱の創世神、すなわち〈原初の魔法使い〉によって創られた世界・ユリアーレ。長い歴史の中で、数々の偉大な魔術師達がこの世界と国を動かしてきました。あなた方は次世代の担い手であり、卵であります。お互いに精進し、励まし合い、時に競いながら、魔法の真髄を知りに参りましょうぞ｣
キラキラと、イグノタス校長の言葉を印象付けるようにステンドグラスの光がより強く私達に降り注ぐ。この学校に歓迎すると言わんばかりに。
｢この世界はとても美しい。その美しさの裏側には、幼い魔法が息づいているのですぞ｣
そんな言葉で締めくくり、校長は短い挨拶を済ませた。
そうね。確かにこの世界はとても美しい。魔法があるからだわ。
ただ、最初のくしゃみの衝撃はまだ生徒に残っているみたい。斜め前の子に、「くしゃみ校長」とあだ名をつけられているし……そのままスタスタ戻ってしまった。え、校長、これで終わり？
｢続いて新入生代表の挨拶。入学試験首席、ノア･フランチェスカ｣
校長の衝撃を忘れ、生徒達がざわつく。私の注意もそちらに向かった。
実のところ、私は入学試験第二位だったと、ナタンにこっそり聞いていた。
本当は順位なんて知らされないんだけど、首席だけは嫌でも分かる。だって入学式で挨拶をするから。
やがてスタスタと壇上に現れたのは、オレンジ色の髪の男子生徒。
｢あ、あの子｣
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2019年12月19日 17時
