第九十七話 ページ11
勇本先生が衝撃波に気を取られている間に、ヤンチャーハンは勇本先生の死角となるところまで大回りをし、後ろ手刃を構えている。
勇本先生はナイフを構え、後ろには気づいていない様子だ。
これ、少しまずいかもしれない。
ヤンチャーハンが勇本先生に切りかかった瞬間。
ギィン。
物凄い金属と金属がぶつかる音がし、ヤンチャーハンが苦しみに顔をゆがめる。
一瞬、なにが起きているのか理解できなかった。
ただ、ヤンチャーハンが後ろから仕掛けた攻撃が失敗した。ということだけは理解できた。
「な、どうなってんだ?」
ボンバーマンの言葉に、冷静になる。
そうだ、衝撃波。衝撃波はどうなったのだろう。
まさかあのナイフで壊したのだろうか?
そう思っていると、ギャン、と刃が何かにぶつかる音がした。
「!?」
全員が驚いて音の方を見ると、木が一本、倒れていた。
―――まさか。まさかだ。あのナイフでヤンチャーハンの衝撃波の方向を変えた、とは言わないだろうか?
それならば、今の衝撃波の意味が通じる。
そして、ヤンチャーハンの後ろからの攻撃は、勇本先生のナイフ一本で止められていた。
「ヤンチャーハン、君は二刀を使うのに適した腕を持っている」
ナイフで二刀を弾き、ヤンチャーハンを開放する。
「ただ、その使い方がまだまだなっていない。二刀、つまり剣が二本あるのだから、バラバラに攻撃すれば有利だろう?」
「あ・・・、確かに」
指摘され、ヤンチャーハンが頷く。
さっき、勇本先生に攻撃を仕掛けようとしたときは、二刀をまとめて勇本先生の肩に振り下ろしていた。
だからナイフ一本で防げたのだ。
「ありがとうございました」
ヤンチャーハンが一礼し、こちらへ戻って来る。
「凄いじゃん、あんた」
「凄かったよ」
「やべぇな、お前」
皆に口々に褒められ、ヤンチャーハンが少し鼻を伸ばす。
「えぇ〜?そうかなぁ!えっへへ」
「「「うっざ」」」
「はぁ!?」
A組の相変わらずの対応に、ヤンチャーハンがブーブーと文句を言う。
「さて、次はあんたかな?秀才の鈍」
孤高の狼がそう言い、秀才の鈍の背中を叩く。
「了解・・・」
そう言い、秀才の鈍が拳銃を構えた。
勇本先生がニヤリと笑い、いつもの通りにナイフを構える。
秀才の鈍が引き金を引くとともに、勇本先生の方へと走り出した。
ナイフで銃弾を切りながら、勇本先生は華麗に秀才の鈍から逃げていく。
だが、秀才の鈍の表情は余裕の笑みを浮かべていた。
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