【歌IいI手】バンド、始めてみませんか？

35 ページ37

「乗り込んだのいいけど、どうすんの？」

ま「うーん、どっか行きたいところある？」

「…特にここってのはない、かな」

そ「だろうね、どうすんのまふ」


うーん…と再度唸り始めて私の視点は窓の外へ移動した


いきあたりばったり旅といえばそう、でもそんな無計画ができない人達なので行き先くらいはと考えをねりねりしてるところ

「…新鮮な空気吸いたい」

そ「空気…、なら海沿いとか？このまま乗ってればつくけど」

ま「いいね、そうしよう」


潮の香り、ってやつか


このまま、電車が無限に続いてくれてもいいくらい居心地が良くて

この中じゃ大勢のひとりになれるから、楽だなあって

そう、思えた

「くあっ…、眠た」

そ「…寝る？」

「残念ながら立ち寝はできないタイプでね」

そ「次結構降りると思うから座れば？」

「余裕があったらね」

…なんで授業抜けてまで私を追いかけてきたんだとか、家に向かわずにこんなところ連れ出してんだとか

聞きたいことは山ほどあるけど、あとで風まかせに話しちゃおうかな


…口が滑っても余計な言葉は出ない人たちだから、聞きたいこと聞こう


駅につくとだっと半分ほどの人数が降りて車内はすっからかんに

あとから人も入らないので席はガラガラ


ま「あいたよ？」

そう促されて端に相川、そのまま左に私一ノ瀬と続いて座る


コミュ障だから知らない人と隣は嫌だと壁をとった相川のスキルもすごいけど、今は置いておく


…日向が暖かい


ひきこもってた時期は朝登ってくる太陽が嫌いで、朝なんて来なけりゃいいのにとか言ってたっけな

馬鹿だなほんと、なんて一人で笑うと、隣の一ノ瀬に不思議そうな顔をされた

「…寝かせて」

そ「ん、前の駅になったら起こすから」


ありがと、そう言ってからちらっと右を見ると眠たそうにしながら参考書を読んでいる相川


根は真面目さんだから、無理とか勝手にするタイプ

みおりと同じタイプだなあ、と思ったがなんで今思い出したんだろうと頭から消し去る


…寝よう、疲れてるから


▪

ま「…そらるさん、眠くない？」

「俺は平気、まふこそ眠そうじゃん」

ま「昨日徹夜したんですけどいい曲作れなくって…」

「無理すんなよ」

ま「わかってます、…桐原さん、疲れてましたね」

「…優先順位を間違えてんのこいつ」


そう言ってみてから、俺の右肩に頭を預ける桐原を見て笑った


自分を大事にしなさすぎ。

36→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す