恋愛オンチの恋模様

30.背番号とユニフォーム ページ32

御幸の様子に違和感を感じながらも、日々は着実に過ぎていき…どうにか期末テストを乗り切った野球部員達を待っていたのは、夏の大会前の恒例行事、背番号の配布だった。

今年はなんと、監督からマネージャーにも試合用ユニフォームが渡され、私と貴子は思わず目を潤ませてしまい…。

だって…まさか、ユニフォームを貰えるとは思ってなかったから…。

監督や高島先生に感謝しつつも、マネージャーの私達にはまだ背番号を縫い付けるという大仕事が残っているため、あまり余韻には浸らず気持ちを切り替える。

開会式も数日後に迫っていて、あまりのんびりしている時間はない。
早速この後、レギュラー陣それぞれの体格に合わせて背番号の位置を仮止めして縫っていくんだけど…。

私、裁縫だけはどうにも苦手で…。

何度か挑戦してみたものの、背番号は傾くし縫い目は大きくてガタガタだしで、結局貴子にやり直してもらった。

そこで今回はもう最初から諦めて、私は仮止め専門係で縫い付けはしない…はず、だったんだけど…。



「…OK、脱いでいいよ御幸。」

マネ室で各自の背番号を仮止めしている中、たまたま御幸を担当してた私は、ついでに少し前から気になっていた違和感のことを聞いてみることにした。

「…そういえばさぁ、御幸…」

「何ですか？」

相変わらず用事が済んだら出ていこうとする御幸に声をかけると、普通に返事をする。
…普通に。

「…うん…その〜…最近、何かあった？」

「…は？」

「え〜とぉ…何ていうか…いつもと様子が違うような…違わないような…」

説明し辛くて曖昧な言い方をしてしまったけど、御幸は私の言葉を聞いてから軽く目を見張った。

それから…ニッ、と口角を持ち上げて…

「別にどうもしませんけど？」

「そ、そう？なら、いいんだけど…」

あはははは、と笑って誤魔化すと、いたずらっぽい笑みを浮かべた御幸がズイッと顔を覗き込んでくる。

「それより…Aさん。」

「…な、何…？」

「これから背番号縫い付けるんですよね？」

「そうだけど、私は…」

「俺の背番号、Aさんがつけてくださいよ。」

「……は？」

「よろしくお願いしま〜す。」

「いや、ちょ…！私の裁縫スキルの壊滅具合知ってるでしょ！？」

「だから楽しみなんじゃないですか。」

ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべてそう言うと、御幸は「いや〜マジで楽しみだ〜」とか言いながらマネ室を出ていった。

…あ…あの野郎…！

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