13.思いの込もったおにぎり ページ15
「ふっふっふっふっふ。」
食堂で他のマネ達とおにぎりを握りながら、私は不気味な笑いを浮かべていた。
「…ねぇA…ほんとにやるの…?」
「当ー然!あいつの面倒なリクエストのおかげで大変だったんだから!」
気乗りしない、という様子の貴子にそう言って、私は手の中の特製・ワサビ入りおにぎりの形を整える。
すると、唯と幸子も複雑な表情で口を開いた。
「えー?でも一応一軍レギュラーですよ?大丈夫ですかね?……あ、カラシもありますよ、Aさん。」
「今度練習試合もありますし…体に影響でなきゃいいですけどねぇ……何なら豆板醤も入れますか?」
「…唯…幸子…あんた達、止めたいの?けしかけてんの…?」
心配する素振りを見せつつ、しっかり刺激物を薦めてくる2人に半分呆れながら、私はワサビ入りおにぎりをラップで包んだ。
昨日、なんとか具の準備ができて(色々あったけど)、いよいよ今夜の差し入れに持っていくおにぎりを作る、という段階になった時。
この面倒なリクエストをブチ込んできた犯人に仕返しをしてやる方法が、神のお告げのように私に降ってきた。
それが、ワサビ入りおにぎり。
一応、牛しぐれと天むすは作ってあげたけど!
けっこう大変だったし!
これくらいしてもいいと思うのよね!
…っていうか、よく考えたらあの買い出しの日の貸し借りって0だったはずなのよ気付くの遅いけど!
「…よし、これで終わりです。」
最後のおにぎりを作り終え、にっこり笑う春乃ちゃんに負けないくらいの満面の笑みを浮かべて、私は言った。
「よーし!じゃあ差し入れに行きますか!」
普通のおにぎりが乗ったトレイとは別の袋に、ワサビ入りおにぎりと一応ミネラルウォーターのペットボトルを入れ、私はウキウキしながら食堂を出た。
* * *
「お疲れ様ー。差し入れでーす。」
貴子が声をかけ、いつも通り寮の裏で素振りをしていた皆の視線がこっちを向いた。
「…あれ?なんか今日のおにぎり豪華っすね。」
ピョコン、とエビ天の尻尾が飛び出している天むすを見て、倉持が軽く目を見張る。
「どっかの誰かがワガママ言ってくれたおかげでね!」
ジトーッ、と御幸を見ながら言ってやったけど、その御幸は私をスルーして、「いただきます」とさっさとおにぎりをパクついている。
この野郎…。
ヒクッ、とこめかみを引きつらせながら、私は一気に軽くなったトレイを春乃ちゃんに渡し、例のおにぎりを取り出した。
いざ、仕返しの時。
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ゆう - →素敵な作品に出会えて良かったです。これからも応援しています、頑張ってください。長文失礼致しました>< (2017年12月19日 14時) (レス) id: bf0a56ad2f (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - はじめまして、1話から一気に読ませていただきました!元々御幸くんの小説読みたいな〜なんて軽い気持ちで読み始めたのですが、読んでいくうちにキュンキュンが止まらなくて、一気に読んでしましました…(笑)→ (2017年12月19日 14時) (レス) id: bf0a56ad2f (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 雪星さん» そうなんですね!笑 是非是非お願いします(人´3`*)〜♪笑 (2016年10月12日 20時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 夏乃実さん» 夏乃実さんっ!私もそんな御幸がツボです(真顔)。自分の欲望やら願望やらが色々詰め込まれた作品ですが、ツボが同じ人には楽しんでもらえたかな、と思ってます(^^;表現とかは…いやいや、まだまだです、はい(>_<)応援ありがとうございます!頑張りますね! (2016年10月12日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 美憂春さん» そうですね〜、気長に待っててください(^^;後朝は、ノリと勢いで書き始めたんですが、予想以上にイチャイチャラブラブ度が高くなって自分でもニヤニヤ通り越して恥ずかしくなってました…( ̄▽ ̄;)マイペースですけど、色々考えてみますね〜(*^^*) (2016年10月12日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2016年8月11日 18時