10.腹立つリクエスト ページ12
御幸から具のリクエストをされてから数日後。
食堂のおばちゃんから材料が準備できたと連絡を受けた私は、今日帰る前に具の準備をするつもりだった。
「…んっとに御幸のヤツ…!面倒なリクエストを…!」
マネ室でブツブツ呟きながらジャージを鞄に突っ込んでいると、隣で貴子が苦笑いを浮かべる。
「手伝おうか?」
「あー、いいよいいよ。昨日も言ったけど、具の準備は私がするから、明日おにぎり作る時に手伝ってくれれば。そんなに毎日貴子に残業させられないよ、女の子なのに。」
「Aも女の子でしょ。」
「…空手三段の凶暴者で、女の子と思われてない女の子だよ…」
「またそういうことを…」
自嘲気味に肩を竦めてみせると、貴子が半分呆れたように言った。
そんな貴子にニッ、と笑ってから、私は鞄を肩にかけてピシッと敬礼する。
「じゃ、ちょっと準備してくるね!」
「無理しないでよ?」
「大丈夫ー!」
そう言って私はマネ室を出て、食堂へ向かった。
* * *
「…えっと…まず牛しぐれ煮が…玉ねぎを切って、鍋に砂糖、みりん、醤油、酒を入れて…」
食堂に到着した私は、おばちゃんと入れ替わるようにして厨房に立った。
準備してもらった材料を前に、エプロンをつけながらレシピを確認する。
あー、ほんと手がかかる…!
差し入れのおにぎりを2日がかりで作ることになるなんて…!
「鮭フレークとか昆布でいいじゃん…それをあの性悪メガネ…わざと難しい注文を…」
玉ねぎの皮を剥きながら、ブツブツと御幸への文句を呟く。
そう、あいつは絶対わざと言ってる。
にも関わらず、どうしてそのリクエストを受けたかと言うと…
『それ絶対時間かかるヤツじゃん!もっと簡単なのに…』
『いやぁ、この前の買い出しは面白かったですよね〜、色々と。そりゃあもう色々と。』
断ろうとしたら、ニヤニヤニヤニヤ笑いながら、暗にあの日の『借り』を強調してきやがった…!
そりゃ確かに迷惑かけたけどさ…!
かけたけども…!
むぅ、と眉間に皺を寄せながら、私は玉ねぎを切り始める。
後ろめたさがあるからこそ、結局は御幸のリクエストを受けたんだけど…
それでもやっぱり…
「なんか腹立つ…!あの性悪メガネ…!」
ギュウ、と包丁を握り締めて呟いた、その時。
「うわ〜、包丁握って言われるとすげぇ怖い。」
「っ!?」
突然、聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、そこには相変わらずニヤニヤ笑いを浮かべている御幸が立っていた。
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ゆう - →素敵な作品に出会えて良かったです。これからも応援しています、頑張ってください。長文失礼致しました>< (2017年12月19日 14時) (レス) id: bf0a56ad2f (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - はじめまして、1話から一気に読ませていただきました!元々御幸くんの小説読みたいな〜なんて軽い気持ちで読み始めたのですが、読んでいくうちにキュンキュンが止まらなくて、一気に読んでしましました…(笑)→ (2017年12月19日 14時) (レス) id: bf0a56ad2f (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 雪星さん» そうなんですね!笑 是非是非お願いします(人´3`*)〜♪笑 (2016年10月12日 20時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 夏乃実さん» 夏乃実さんっ!私もそんな御幸がツボです(真顔)。自分の欲望やら願望やらが色々詰め込まれた作品ですが、ツボが同じ人には楽しんでもらえたかな、と思ってます(^^;表現とかは…いやいや、まだまだです、はい(>_<)応援ありがとうございます!頑張りますね! (2016年10月12日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 美憂春さん» そうですね〜、気長に待っててください(^^;後朝は、ノリと勢いで書き始めたんですが、予想以上にイチャイチャラブラブ度が高くなって自分でもニヤニヤ通り越して恥ずかしくなってました…( ̄▽ ̄;)マイペースですけど、色々考えてみますね〜(*^^*) (2016年10月12日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2016年8月11日 18時