【白河勝之と夢(1)】★ ページ39
「あー…帰りたくないなぁ…」
「馬鹿言ってないで準備しろよ。明日も仕事なんだろ。」
こたつに入ったままグズグズする私に、部屋の主である勝之は淡々と告げる。
「そーだけどぉ…」
高校時代に知り合って、なんだかんだで大学生の時に付き合うようになって、有り難いことに社会人になっても私達の関係は続いてる。
でも、遠距離恋愛だからすぐには会えないワケで。
帰りたくないってことはつまり、離れたくないってことで。
まだ一緒にいたいってことで。
チラリ、と勝之の様子を窺うけど、私のことは気にする様子もなく、さっさと自分のコートを羽織っている。
…まぁ…勝之なら無理もないか…。
むしろ、勝之は私が帰っても全く平気みたいで…。
私だけが帰りたくないって感じてるのかと思うと、なんか…寂しい…。
はぁ…とため息をついていると、コートを着てマフラーを巻いた勝之が、スッと私の横にあぐらをかいて座った。
「…そんなに帰りたくないワケ…?」
「だってさ…」
さすがに、離れたくないとストレートには言えないんだけど…。
こたつの布団に口元を埋めてボソボソ言うと、勝之はいつもと同じように無表情のまま言った。
「…じゃあ聞くけど、一生ここにいる覚悟はあるの?」
「…え?一生?」
…と、予想していなかった言葉にパッと顔を上げる。
「いや、さすがに一生ここにいるつもりは…」
苦笑いしながら言いかけた言葉が、勝之の目を見ているうちに途中で止まる。
…なんか…やけに真剣な感じが…
「…勝之?…え…覚悟、って…」
勝之の意図が理解しきれず、無意識のうちに問い返す私に、勝之は表情を変えずに告げた。
「『白河A』に…なる覚悟はある?」
私は…
私は、すぐには言葉が出てこなくて。
時間とともに、じわじわとその意味が心に染み込んできて、ドクンドクンと鼓動が激しさを増す。
「…か…勝之…!それって、もしかして…!」
動き方を忘れたかのように固まる口を無理矢理動かすと、勝之は私の横に座ってから初めて目を泳がせた。
「…もしかしなくても…そのつもりだけど…」
チラ、と視線だけを私に戻して。
でもまたフイッと逸らして。
僅かに頬を染めながら、勝之は続ける。
「そろそろ…駅でお前を見送るの飽きてきたから…」
きっと照れ臭すぎて、眉間に皺を寄せて。
「…覚悟があるなら、ずっとここに…隣にいればいい…」
呟くように言われたその言葉は、私の心を優しく包んで震わせた。
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雪星(プロフ) - さーたんさん» 楽しんでもらえたようで良かったです!とりあえず、照れはするだろうな、と。それからの反応はそれぞれ違うだろうな、と思いながら書きました(>_<)ゾノはこのシリーズのオチ担当です(笑) (2017年3月2日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - のりさん» ゾノは、あの歌を歌ってる場面がポンッと降ってきまして(笑)御幸の回なのになんだかゾノがメインになってしまったような…(^^;まぁ面白くなったからいいかな、と(^^; (2017年3月2日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 桜さん» いえいえ、こちらこそせっかくリクしていただいたのに、お応えできなくて申し訳ありません(T_T)再開したら、またヨロシクお願いします! (2017年3月2日 20時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
さーたん - やばいですね!!!事故チューどれも最高でしたッ!金丸はかわいいし亮さんはかっこいい!!そしてゾノの登場にはわらいました笑 みんなが照れててテンション上がりました笑 ありがとうございます!!笑 (2017年2月19日 0時) (レス) id: a56f300cf9 (このIDを非表示/違反報告)
のり - 雪星さん» ども、おひさです。…とりあえず、ゾノwお主は我をわらかしてくるのぅw御幸の話を読むとデリカシークラッシャー御幸を思い出してただでさえ吹いちゃうのにw (2017年2月16日 23時) (レス) id: 7a0132dcf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年7月29日 18時