【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室６《短編集》

【御幸一也と催眠術(1)】★ ページ41

※御幸視点
＿＿＿＿＿＿＿

コンコンコン

「………あれ？」

とある人から呼び出しを受け、着替えてからマネージャー室を訪れたものの…反応がない。

誰もいねーのか…？
でも、確かにマネ室に来いって言われたんだけどな…。

ポリポリと頭を掻いて少し考えてから、俺はそっとマネ室のドアを開けた。

「…失礼しまーす…」

部屋の中を覗くようにゆっくり首を突っ込んでみると、机に突っ伏して寝てる後ろ姿を発見。
…まぁ…Aさん…だろうな。

どうしようか迷ったものの、結局俺は部屋の中に入り、パタンとドアを閉めた。
するとその音で目覚めたのか、Aさんが身動ぎして体を起こす。

「あー、スミマセン、起こしました？」

…つーか、最終的には起こしたけどな。
ここでずっと寝てたら風邪ひきそうだし。

「…あれ…御幸…？」

寝起きでボーッとしているのか、Aさんは手で目を擦っている。

「亮さんにここに来いって言われたんですけど…何か知ってます？」

「え…？亮介…？…あぁ…そういえば、実験がどう、と…か…」

そう言いながら俺を見上げたAさんは、椅子に座ったまま目を見張って固まった。
…なんだ？

「…Aさん…？」

様子がおかしい気がして呼び掛けると、Aさんは黙ったままゆっくりと立ち上がる。

「…御幸…」

…と、俺の名前を呼ぶAさんは…


なんだか耳まで赤くなってて。


目が潤んでトロン、としてて。


…あれ？なんか目の中にハートマークが見えるような…？


こりゃ本気でおかしいだろ…
そう、思った瞬間。


Aさんが、俺の首に腕を回して抱きついてきた。


…………は？

「………あの………Aさん………？」

全くもって状況が理解できねぇ。

なんだこれ…。

何がどうしてこうなった？

「…あのね…」

固まる俺の目の前で、Aさんは密着させてた体をほんの少しだけ離すと、相変わらずトロン、とした目で俺を見上げる。


顔は上気して恍惚とした表情…


長い睫毛で縁取られた潤んだ瞳…


ドクン、と心臓が跳ねて、思わず目を泳がせた。


ちょ…これ、さすがに…。


どうにも動揺が隠しきれなくて、ガリガリと頭を掻いていると、Aさんが何の躊躇いもなく告げた。


「…私…御幸が大好き…」


俺は…

俺は、ほんとマジで絶句しちまって。

明らかにいつものAさんじゃねぇな、と冷静に思う一方で、カッと顔が一気に火照ってきた。

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