【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室６《短編集》

【稲実の場合・壱(8)】★ ページ16

スー…っと大きく息を吸って…
ハー…っと吐いて…。

一人になったマネ室で、御幸へのイライラを静めるべく深呼吸をする。

もうアイツは放っとこう。
気にしたら負けだ。

そう自分に言い聞かせ、よし、帰ろう、と気持ちを切り替えた…瞬間。

バッタアアァァン！！

「Aさーん！ごめんね遅くなってー！」

「お嬢、コイツと約束なんてしてないんだろ？」

「…どうして俺までこんなところに…」

勢いよくドアが開いたと思ったら、聞き覚えのある声が3人分。

「…なんでこのタイミングで来るの…」

はあぁ…と巨大なため息をついてから、私は稲実の2年生3人組を恨みがましい目で見やった。

「…あれ？Aさん、何か顔色悪くない？」

すると、直ぐ様成宮君がヒョイと顔を覗き込んできて、そんなことを言う。
目敏いと言うか何と言うか…。

「ちょっとお腹痛くて。今日はもう帰ろうかなって…」

「え、マジで？大丈夫？…つーか本気で顔色悪いよ？病院とか行った方が良くない？」

「大丈夫大丈夫。その…病気じゃないって言うか…」

と、ゴニョゴニョ濁していると、成宮君がハッと何かに気付いた顔をして、ポン、と手を打った。

「あぁ！なんだ、あの日か！」

あっけらかん、と指摘されてしまい、私は何だか居心地が悪くなって成宮君から顔を逸らした。
ちなみに、一緒にやってきた神谷君は軽く目を見張り、白河君は眉間に皺を寄せている。

「…察しのいいことで…」

「なんせ姉ちゃんが2人いるからねー。」

なぜかフフン、と得意気な顔をしている成宮君。
そっか、お姉さん2人いるのか…。
純といい成宮君といい、家族に女性が多いと、こういうことにも慣れてくるのかなぁ…。

なんてぼんやり思ってたら、得意顔の成宮君を押し退けて神谷君がズイッと真顔で近付いてきた。

「お嬢、何なら俺が協力するけど…」

「…何の協力…？」

「…生理痛辛いんだろ？だったら…」

そう言うと、神谷君はなぜかガシッと私の手を取る。

「生理が来ないようにすればいいじゃん？」

「…どうやって？」

嫌な予感に襲われつつ聞き返すと、神谷君は真顔のまま続けた。

「お嬢と俺の愛の結晶を作っちまえば生理も来ない…」

ゲシッ

ドスッ

ベシャッ。

…成宮君から背中に肘打ちを、白河君から太ももに膝蹴りを喰らって、神谷君は床に崩れ落ちた。

「カルロ、最悪。サイテー。」

「何気持ち悪いこと言ってんの変態。」

…うん、その通り。

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