〈21〉違和感【亮介】 ページ21
ガチャッ
…と純の部屋のドアを開けて外に出る。
一度振り返って中を見れば、みんなに取り囲まれた純が真っ赤な顔で頭を掻きむしっていた。
相模が好きだって大人しく吐けばいいのに、「色んな条件が重なって偶々送ることになっただけだ」なーんて…。
…ま、その条件を整えたのは俺なんだけど。
とりあえず、このままじゃ意地張って吐きそうにないから、軽く縛り上げてやろうかと俺は自分の部屋に紐を取りに行こうとしていた。
…その時。
「…あれ…クリス。」
「なんだか随分と楽しそうだな。」
通路の端の方から、ジャージのポケットに手を突っ込んで歩いてきたのはクリスだった。
「まぁね。クリスも来たら?純が真っ赤な顔して意地になって吼えてて面白いよ。」
「…なんだか伊佐敷が若干気の毒だな…」
苦笑いを浮かべるクリスの顔を見ているうちに、俺はある事を思い出した。
そういえば一年の時、クリスとも同じクラスだったっけ…。
しかも、相模と二人で委員長してたような…。
「あのさぁ、クリス…」
ニコッといつも通りの微笑みを作って聞く。
「相模Aって…覚えてる?」
すると、俺のその質問にクリスは目を見張って答えた。
「相模?…あぁ…覚えてるさ。一、二年と同じクラスだったからな。」
「そっか…クリスは二年も同じクラスだったんだ。」
「…相模がどうかしたのか?」
「純が意地になってる原因だよ。絶対気になってるクセに、中々認めないからさ…」
クリスに説明しながら、俺はふと、もしかしたら純は、認めないんじゃなくて自分でもまだ自分の気持ちに気付いてないのかもしれない、と思い付いた。
…有り得る。凄く。
これはちょっと尋問の方向性を変えなきゃいけないかもしれない___
そんな事を考えながら、再びクリスを見上げた時だった。
「…そうか…伊佐敷が、相模を…」
純の部屋のドアへと視線を向け、静かに呟きながら、ほんの少しだけど…クリスが目を細めた気がした。
部屋の中にいる純に向けられているようなその眼差しに、なんだか特別な意味があるような気がして…
…あれ…?
なんだか、今…
「…楽しそうだが、これからリハビリだからな。」
スッと俺に視線を戻してクリスが言い、俺は我に返って返事をした。
「…え?…あぁ、そっか。残念だね。」
「あまり苛めてやるなよ。」
ポン、と俺の肩を軽く叩いて、クリスは通り過ぎて行く。
その背中を見送りながら、俺は言葉にできない微妙な違和感を感じていた。
190人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にゃん丸(プロフ) - 純さんのピュアな感じが堪らなく好きです。私は亮介くんが大好きなのですが、こちらの亮介くんもすごく好きで、素敵な夢をありがとうございます。 (2022年1月28日 20時) (レス) @page50 id: 07285a2235 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - コメントは初ですが、読むのはこれで5回目くらいな気がします……定期的に読みたくなるくらい大好きなお話です! 素敵な夢をありがとうございます! (2020年9月11日 23時) (レス) id: af19170a94 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 純さんの小説嬉しすぎます! (2019年1月4日 18時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
ウコッケー - これすげぇ好き (2018年1月9日 13時) (レス) id: 2f0a509601 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - Akkiyさん» ヤバい、そんなん言われたら考えちゃうじゃないですか(笑)まずは今書いてるヤツを終わらせないとですが…とりあえずプロットもどき作るか(笑)←ヤル気だ(笑) (2016年6月11日 20時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪星 | 作成日時:2016年2月6日 18時