vs.8 シンジュク・ディビジョン ページ9
Side.幻太郎
もう少しで辺りが暗くなりそうな夕暮れ時。
あれから、せっかくだからと言ったAはシブヤを堪能していった。
Aはシブヤに来たのは久々だと言っていたから、純粋に楽しみたかったのだろう。
Aから片時も離れない乱数もAと共に楽しんでいたが、シブヤから離れシンジュクに近づくたびにその表情はわずかだが険しいものになっていく。
乱「ねぇA〜本当に行くの?あんなところよりシブヤで僕と一緒にデートしようよ〜」
『俺のワガママでごめんね。帰ったらデートしよう』
乱「ほんと?約束だよ!指切りしよ指切り!」
『うん』
ゆるく小指を絡めるAに対し、乱数はガッチリと小指を絡める。
まるで“もう逃がさない”とでも言うかのように。
ーーー
各々言葉を交わしながら歩を進めると、一件の小さな病院に辿り着いた。
診療時間はまだ少しだけ残っており、小生たちは病院に足を踏み入れた。
薬品の匂いが立ち込める室内の受付にはナース一人だけが佇ずみ、書類をまとめていた。
小生たちの姿に気づくと、こんばんはと軽く会釈をした。
「診察ですか?ご予約の方は…」
『いえ、診察じゃないんです。神宮寺寂雷先生はいらっしゃいますか?』
「おりますが…お名前を頂戴してもよろしいですか?」
『神崎Aです』
「かしこまりました。少々お待ちください」
そう言ったナースはパタパタと足音を鳴らして奥の方へ行ってしまった。
しばらくしないうちに奥の方からガタッと大きな音がした後、ゆらりと大きな影が現れた。
寂「Aくん…?」
『お久しぶりです、寂雷さん』
寂「…本当に、君なのか…?」
『ちゃんと本物です』
普段見ない神宮寺寂雷の慌てぶりを目の当たりにし、Aがどれだけ大切にされてきたのかを感じた。
ふら、とおぼつかない足取りでこちらに歩いてきた神宮寺寂雷はAの前に立つと、壊れ物を扱うかのようにそっとAの頰に指を滑らせた。
Aの存在を確かめた神宮寺寂雷は、ガバッとAを強く抱きしめた。
その光景が面白くない乱数は二人の間に割って入る。
乱「はいはーいAを離してよね寂雷!このままじゃA潰れちゃうから!」
寂「…相変わらず君は、Aくんのこととなるとムキになるな」
乱「えーなんのことー?僕はAを助けただけだよっ!」
やれやれ、という表情をした神宮寺寂雷を見て、少なからず同情をした。
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鈴 - とっても続きが気になります。更新まってます (2019年2月2日 19時) (レス) id: 8fe2495ae6 (このIDを非表示/違反報告)
月-狂人- - 最高です!!にやけながら読ませてもらいました((早く続きが読みたいですが、無理はされないでくださいね。応援しております!! (2018年10月14日 6時) (レス) id: 9f6c7298bc (このIDを非表示/違反報告)
苺大福(プロフ) - スッゲー面白かったです。更新頑張ってください! (2018年9月24日 9時) (レス) id: 99e8f5403a (このIDを非表示/違反報告)
上原(プロフ) - 琴葉さん» 作者です。そのうち全員に取り合いさせたいです(願望)楽しみと言ってくださりとても嬉しいです、更新頑張りますのでどうぞよろしくお願いします◎ (2018年9月14日 15時) (レス) id: 9379cd824d (このIDを非表示/違反報告)
琴葉 - やめてっ!私の取り合いをしないでっ!マジでそんなことが言えそう…。続き楽しみです (2018年9月5日 23時) (レス) id: cc1af6d8b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:上原 | 作成日時:2018年7月24日 1時