第1章 旅人は拾われる 01 ページ2
*
大王がこの地を支配する。気まぐれで目立ちたがりで自分勝手な大王に、人々は恐怖していた。
私、Aと影山さんは、恐怖する方でなくてさせる方だった。つまり、弓使いとして大王様のもとにいたことがある。
過去形なのは、すでにそれは違うからだ。色々あって――まあ、そのへんはおいおい語って行こうと思う――大王様のもとを離れて旅に出た私達は、
私達は。
「…………影山さん、布って食べれるんでしたっけ」
「食ってもいいけど腹壊すぞ」
絶賛乞食中だった。
大王様の城を出たからというもの、ここ数日まともな食にありつけていない。
ああ、今すぐあたたかいスープが飲みたい。いや、贅沢は言わないから、水だけでも。綺麗なお水……。
「あっ雨が降ればいいんだ! 私雨を降らせる儀式の本読みました!」
「何で雨なんだよ」
「じゃあ影山さんは水が欲しくないんですか!?」
「…………」
影山さんが干からびる前に言えてよかった、と心から思った。どうやらあんまりにも食べてなさすぎて、喉が乾いていることにすら気がつかなかったらしい。
森にでも行けば食料となる木の実や動物、それに水も手に入るのかもしれないが、いかんせんここは荒れた地。
出て来る前にざっと見てきた国土地図(ただしあまり正確ではない)を考えても、森は大分先だ。
と、いうわけで。
「雨を降らせる儀式って、どうやるんだ」
「えっとですね……確か……」
記憶の底に眠る記述を思い起こす。
文献の類は結構な量を読み漁っていた。弓の稽古に飽きたら、とりあえず何か書物を引っ張り出していたのだ。
「……あっ! そうそう、思い出しました。まずは聖獣を一匹用意します」
「……聖獣……」
「その聖獣に白魔術の呪いをかけて、それからええと……」
アメフラシの魔方陣を使って、大地に眠る雨を巻き起こして……そこまで言ってから、私は口を閉じた。
「……無理ですね……」
「…………」
影山さんは眠そうな顔をしていた。私も頭を使ったことで限界がきたのか、どんどん視界がはっきりしなくなる。
遠のいていく意識の中で、声が、聞こえた。
『……置いて行け! 早くしろ、急ぐんだ』
『ごめんなさい……本当に……ごめんなさい……』
『おい、こいつらどうする?』
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時