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*
「……あ、れ……」
ぼんやりと目を覚ましたら、まず背中に違和感があった。
硬い砂、地面の上……ではなく、ふかふかで柔らかい。花の匂いがする。
……そっか。天国ってこういうところだったんだ。影山さん、ごめんなさい。私死んじゃうみたいですけど、なんか生前の行いがよかったらしいので天国に行けそうです。影山さんは地獄っぽいですね……。
でも死ぬのは一緒なんですから、怒らないでください。変ですね、ちょっと寂しい……。
「水が欲しかった……」
「あ、起きた?」
「っ!?」
ばちいん、と雷が落ちたようだった。ぱっと目を見開くと、まだ輪郭ははっきりしないけど……、
私の顔を覗き込んでいるのは、若い女の人だった。
「……え、」
「あ、ごめんね。びっくりさせちゃったかな?」
優しそうな人。あ、はい……と曖昧に笑っていると、次第に明瞭になってくる景色。
木造の天井、窓から差し込む光。微かな風で、花柄のカーテンが踊っている。
天国ではないみたいだった。そのかわり、いつかの傷がズキリと痛む。思わず顔をしかめると、慌てた声がした。
「ど、どこか痛かった? 大丈夫?」
「あ、いえ、平気です……」
「ならいいんだけど……」
痛かったら早めに言ってね。優しい声に涙が出そうになった。久しぶりに優しい人に会った気がする。
段々と落ち着いてきて、上体を起こせるようになった。服装は前のままだけど、防御する装備だけが外されていた。……そして、生々しい傷跡。
「……手当て、しようと思ったんだけどね。やれるのは少ししかなくて……」
申し訳なさそうな声に慌てて顔を上げた。掌を振って「とんでもない」と彼女に言う。
「前からある傷ですから、大丈夫です」
「そう……? あ、喉乾いてるでしょう。お水あるけど、」
「いただきます」
「早いね……」
澄んだ水を一気にあおった。すぐに飲み干せてしまう。
乾いた喉に、心に、器官に、――全身に伝わる水分。飢えていたすべてが、洗われる気がした。
うちの村に戻る途中だった商人が、あなたと、一緒にいた男の人を拾って来たの。
彼女――舞さんはそう説明した。一緒にいた人はどうなったんですかと訊くと、すぐに起きて今はご飯にありついてるらしい。私もすぐに行こうと思った。
落ち着いてから起き上がる。久しぶりにちゃんとしたベッドで寝たからか、逆に痛い。でも、それ以上に優しかった。
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時