04 ページ34
*
自分の動きがスローモーションのように感じられる。地面に足を引っ掛けて、真正面から転んだ、ということに気がついたのは地面に手をついた後だった。
「ったぁ……」
え。
左足が痛んだ。いつかの傷――その痛みじゃない。新しい感じの、ずきりと嫌なもの。
足、捻った? そんな、立てないなんて、
いつの間にか、ヤツはすぐそばまで来ていた。
ひ、と思わず声が出る。怯んで立てない。
生臭いにおいとおぞましい呼吸音。黒に近い紫色、見開かれ充血したような目。
間際になってこんなに観察できるだなんて思わなかった。すべての動作が、時間の流れが、何倍も遅く感じられた。
「っA!!」
影山さんのいつになく必死な声と、彼の弓を引く音が聞こえて、思わず目を瞑ったその時。
ジャキンッ
「…………え」
誰のものでもないような、切り裂く剣の音が聞こえた。
ばちっと目を開くと、目の前を駆けていく銀色の光。私が呆然とする先で、ヤツの身体が光と共に真っ二つに切り裂かれる。
何倍もの呻き声が森じゅうに響き渡った。そして、閃光弾のようにあたりを照らした後。
消滅、した。
「…………っはあ」
大きくて重たそうな剣を振り下ろす。
重装備の背中。その背格好が、いつか見た、景色光景と重なる。
「…………そんな」
嘘でしょ。そんな、まさか。
ドタドタと背後からする影山さんたちの足音。それに気を取られないまま、私は何となくぼんやりと目の前を眺めていた。
それは、偶然で。
それは、運命になる。
「――大丈夫か?」
振り返ったその人は、目が合って「……あ」と驚きを隠さずに呟いた。
それがもし、奇跡なら。
私は動揺と、混乱と、歓喜を隠すことができないだろう。
逆光で暗い"彼"の顔はよく見えなかったけれど、確かに、彼が彼だと判別できた。
呆然として、どことなくまだ上の空な頭のまま、ぽつりとその名をつぶやいた。
「いわいずみ、さん……」
そう。彼こそ――。
*
6人がお気に入り
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時