「」I miss you…【MS】 (ページ27)

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「潤が描いたの？」

「ううん。絵を描くのが好きな友達が描いたんだ。そんなとこに挟んだの知らなかったよ」

「すげーうまいね。この猫、潤に似てる」

だってそれ僕だからね。あの人は僕のことを黒猫みたいだと、よく言っていたから。
繊細な筆跡を指でなぞる彼に、僕はとっておきの秘密を教える。

「青い鳥は翔くんだよ」

「これ？これ俺？」

「そう。僕はその友達によく、翔くんのことを“幸せの青い鳥”って言ってたから」

「なにそれ、なにそれ！」

「読んだら話そう、あと少しだから」

「まじかよ俺もう全然ストーリー入ってこねぇ」

すべてを打ち明けるつもりはないけれど。君が恋しくて恋しくて仕方がなかった僕の話を、これからゆっくり聞かせてあげよう。ポストカードに描かれた黒猫と青い鳥の物語を。

「まだ？」

「まだ。あと5ページくらいかな」

「早く、早く」

「翔くんが黙っててくれたら10分もかからないよ」

意地悪を言って笑えば、うんとかんんとか唸ってもどかしそうにするのが可愛い。ちょっと怒ったり拗ねたり、ごねたりする時の可愛い顔は変わらないままだなぁ。きっとずっと変わらないんだろうな。ずっと。

「ねえ」

「まだあれから2ページしか進んでないよ」

読みかけの本を閉じてしまった彼を笑って、あれから全然時間が経っていない事を示す。僕も僕で普段より速度を上げて読んでいる自分が可笑しかった。
せっかちな彼はまた可愛い顔してるんだろうか、なんて隣を向けば顔を見るより前に形のいい頭が肩に乗っかる。意地悪し過ぎたかな。表情が見えなくて、少し戸惑う。
僕の呼吸を感じているのか呼び掛けておいて何も発さない彼に、人の事せっかちだとか言えない早さで痺れを切らした。

「どうしたの」

彼は口を噤んで、僕は耳を澄ませて。静かな空間でブランケットが微かに音を立てた。

「ずっと一緒にいよ」

こっちを見ないまま不安そうな声を出すのは、きっと過去にそう言われた僕が曖昧に濁した事が少なからず傷になっているからだろうか。あの時はごめんね。僕はきっと沢山、君に謝らないといけない。
けれど説明出来る事ばかりではないから、すべてを打ち明ける事が最善だとは思えないから。

「そうだね。ずっと。」

僕は残り数ページで読み終える本に栞を挟んで、ブランケットの下で僕の服の裾を握り締める手に自分の手を重ねた。