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「どっち？」
「どっちでも良い」
もう何でも良い。酷くされて傷付きたい。心を裂いて楽になりたい。そんな気持ちで、さっき押し倒された時に床に打ち付けた後頭部がじわじわ痛むのを感じていた。
「んじゃ足開きなぁ」
彼が寝室から持ってきたローションを垂らして“入れる指”を濡らす。僕は言われた通りに足を開いて、あとはもうなされるがまま。
「鳥ちゃんとする時もこっち？」
「あの子はネコ」
「鳥なのにネコかぁ」
ふふ、と笑ってすぐさま声色を変えて。くだらないこと言うなぁと思っている僕に、悪魔のような声で囁く。
「お前は昔からずっと、黒猫みたいだよ」
「ん、」
全然慣らされないまま入れられて苦しかった。冷たくて堅い床に体を押し付けられてあちこち痛かった。でも、それで良かった。どんなにめちゃくちゃにされても辱められても精子が涸れるほどイかされても、どんな痛みに苛まれても心がズタズタになっても。楽には、ならなかった。翔くんを手放してしまった痛みを超える衝撃は何をしても得られなかった。
目が覚めたら寝室前の廊下に二人で転がっているという酷い有様に愕然として、体のあちこちが痛くて、既に乾いた体液や諸々が夥しく飛び散っていて。ただただ虚しかった。
そうして、たまに、どうしようもなくなった時だけ智君に慰められるようになった。
過去に愛した人だというのに僕は、いつも行為の最中ずっと違うひとの事を考えていた。ずっと、ごめんね、と思っていた。どちらに対しても。
ある時まだ細い糸の一本ほど意識を保っている状態で泣きながら「ひどい、ひどい」と智君に言ったら彼は、それでいいよと言った。
一番ひどいのは僕なのに。
肌を合わせるようになってから一度も、僕の部屋のベッドではしなかった。僕が嫌がってから彼は察して、暗黙の了解と化していたから。するのは智君の部屋のベッドか、僕の家の時はソファだった。廊下でしたのは一度だけだった。
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作者名：7oh
| 作成日時：2019年7月13日 20時
