33_偽装恋人(宮地side) ページ34
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「この人は・・私の・・こ・・恋人です！」
何、見え見えの嘘を言ってんだ…と思った。
でも、
「……ｯ」
ギュッと強く握られた服の袖。
「小林さん、付き合っている人はいないって」
「そ、それは・・」
コイツ、つくづく俺を驚かせてくれるな。
「……A。終わるまで、外で待ってるから。」
「・・！」
ストーカー、追っ払いたいんだろ？
だったら俺は、お前の偽装恋人だろうが
何にだって、化けてやるよ。
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PM22:30
「ﾊｧｰｯ…」
寒…
白息が出て来やがる。
アイツまだかな・・
「宮地さんっ」
「おぉ」
思った側から出て来た。
「あの男は？」
「それが・・疑ってるみたいで」
「だろーな(笑)」
先程の僅かな会話を聞いただけで
俺達が " 恋人同士 " であると判断するには、
ちと無理があるだろう。
「本当、ごめんなさい」
「は？」
家に向かっている最中、隣で彼女がボソリと呟く。
「咄嗟の事とは言え・・その・・恋人って、嘘を言って・・」
暗闇と身長差から、その時の彼女の顔を伺い知ることが出来なかった。
「まぁ、しゃーねーだろ。」
「やっぱり私、山口さんには嘘だったと・・」
馬鹿だな、コイツ。
「恋人いる設定にした方が、好都合じゃね？」
「た、確かにそうですけど・・」
「俺の事は気にしなくて良い。どうせ暫く彼女作るつもりもないし」
「そうですか・・」
この時俺は、彼女の言動１つひとつを、特に気に止める事なく聞き流していた。
「あ、そうだ」
「はい？」
「俺今夜は宅飲みするつもりだから。」
「え？」
「バイト先で鬱憤溜まるんだよ。お前どうする？」
「じゃあ・・一杯だけ、なら」
「よし！つまみ買いに行こーぜ」
お前が誰を好きとか、
誰と付き合ってきたとか、
知る由もない。
俺は、単なる " 偽装恋人 " 。
それ以上にも以下にもならない。
全てが解決してしまえば、誰にも知られないまま消えていく。
別に、良いけどな…
「宮地さん」
「ん？」
「ありがとう。」
ただ１つ確信しているのは、
お前が好きだというこの想いは、
そう簡単には消えないだろうということだ。
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作者名：ぴこ | 作成日時：2018年1月17日 3時
