31_カップ麺(宮地side) ページ32
昨日の今日で、えらく濃い日だった。
「ここ、狭いけど俺のトレーニングルーム。」
「はぁ・・」
「持ってきた荷物はここに置いて。暫く此所をお前の部屋にしてやるから。」
昨日は時間も時間で、コイツはベッド、俺はその部屋の床で寝ていたが・・
流石に何日も寝泊まりするとなれば、同じ部屋でってのはキツい。
「ありがとうございます。」
「ま、テレビ見たくなったら俺の部屋来ても良いけど…」
俺にだって、理性はあるからな。
「はい。」
しかし警戒心の無い女だ。
相手が俺であった事に感謝しろよ、全く・・
「・・つか腹減らね？」
「・・減りました(笑)」
朝から有名人を前にして、精神的にもクタクタだ。
「あ、ちょっと待ってろ。」
「？」
先日実家から送られてきた段ボールが、未封のままであったことに気づいた。
「お、ちょうど２つだ。」
「？？」
「"きつね"と"たぬき"、どっちが良い？」
「？？？？」
何だ、その微妙な反応は。
「食ったことねーの？カップ麺。」
「ｺｸﾘ」
マジか……！？
「金持ちか、お前」
「美味しいんですか？」
興味津々って顔だな・・
「これはな、沸かした湯を入れてだな」
「さ、３分でうどんが！？」
「・・・お前面白いな。」
どこまで俺を驚かせたら気が済むんだ。
「ほい。お前きつねで良い？」
「すごい！！」
今度は出来上がったうどんに感激している。
「ｽﾞﾙｽﾞﾙ……まぁ、舌が肥えてる奴からしたら美味くも何とも「美味しいです！」
マジでぇ！？
「こ、これが庶民の味だよ」
「もっと早くから知っていれば良かったです」
「・・変わってんのな。」
コイツ、最高に面白いな。
「・・宮地さん、」
「ん？」
残り少なくなったうどんをすすっていると、彼女がこちらを向いて正座していた。
「本当に、ありがとうございます。」
「！？いや、いいって」
「いえ、本当に感謝しています。
昨夜、あの店に宮地さんがいなかったらと思うと・・」
確かに。
俺いなかったら、コイツ今頃どうしてたんだろ。
「宮地さんと出会えて、良かったです。」
「！？」
コイツ・・
「は、早く解決するといいな。ストーカー」
「・・はい！」
弱ったな。
口ではそう言いつつ、
彼女と、ずっとこうしていたい
と、思ってしまう愚鈍な自分がいた。
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作者名：ぴこ | 作成日時：2018年1月17日 3時
