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「明日、朝一でここを出てください。」
「あら、また随分と急ね。」
ドストエフスキーが彼女の好みを考慮したのであろう、西洋アンティーク調の化粧台を前に、Aはその長い髪をとかしていた。
ドストエフスキーはその後ろから、彼女の艶やかな髪をひと房手にとると、それに接吻を落とした。
「貴女の温もりがない寝台でこれからを過ごすと思うと、気が狂いそうです。」
「ふふ、お上手ですこと。」
明日、早朝に彼女はここから幾分離れた海岸へと向かう。
その海岸で、シグマの部下が待っているという。
「海岸までの過程は貴女におまかせします。私では太宰くんに読まれる可能性がある。」
「私が考えても、同じ事だと思うけれど。」
冷たい手が、Aの首筋を摩った。
細められた彼の瞳が化粧台の鏡に写る。
非情で狂気に満ちた紫水晶の瞳____。
だが、今はそれが妙に艶やかで蠱惑に満ちていた。
そして自身の瞳も同じよう、
ギラギラとした眼光だった。
「貴方の考えていること、当ててあげましょうか？」
「それは好い。では私も、貴女の考えていることを当てましょう。」
_____ゾクゾクしているんでしょう、この瞳に。
それが合図かのように、ドストエフスキーは彼女をかき抱くと、獣のようにその唇に噛み付いた。
彼らしかぬ淫らな熱に、Aの身体にゾクゾクとした何かが走った。
静かな部屋に吐息だけが響く。
いつの間にか寝台へと移動していた二人の影は重なり、かすれ合う布の音も相まう。
吐息が艶やかな声に変わるまで、幾らもかからなかった。
____その最期の晩、幾度と愛を呟いたドストエフスキーが初めて彼女を抱いた時だった。
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津島 紫(元.朱晴)(プロフ) - 狸古参さん» 恐縮です、ありがとうございます。これからも頑張りたいと思います！名前の方ですが、私太宰治さんの作風が大好きで勝手ながら、、後私の縁のある神社の名前が偶然津島であったので、おかりしました。 (2019年7月13日 15時) (
レス) id: eb415dbbf6 (このIDを非表示/違反報告)
津島 紫(元.朱晴)(プロフ) - テクテク道化師さん» ありがとうございます。これからも楽しんで頂ければ幸いです！ (2019年7月13日 15時) (レス) id: eb415dbbf6 (このIDを非表示/違反報告)
狸古参(プロフ) - なんかもう、好きです。なんで伸びないんでしょうね？真剣にそう思うほどの名作だと思います。お忙しいとは思いますが、どうかご執筆の方宜しく御願い致します。…所でお名前なんですが、太宰治さんの本名の津島修治から取っているのでしょうか？ (2019年7月13日 13時) (レス) id: 8c91947ba7 (このIDを非表示/違反報告)
テクテク道化師(プロフ) - 不思議な世界観で書かれていてとっても面白かったです！ (2019年6月7日 16時) (レス) id: 6e13862324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：津島 紫(元.朱晴) | 作成日時：2019年6月6日 22時
