虎杖姉は一撃女【呪術廻戦】

４.５撃目 ページ7

俺、虎杖悠仁にとって、姉は紛うことなきヒーローだ。その強さに、俺はずっと憧れていた。


　ヒーローといっても、別に姉ちゃんはそこまで立派な人じゃない。人の話は聞かないし、物忘れは激しいし、余りにも浮世離れしている性格だ。
　考えてる事は大抵ご飯とスーパーの特売セール。その上かなりの節約家で、同年代の人より近所の主婦の方が気が合いそうである。現に、姉ちゃんはよくご近所から差し入れを貰っていた。二人で駄菓子一年分を消費したのはいい思い出である。

　それでも生まれた時からずっといれば分かるのだ。姉の清々しい程の逞しさが。

　姉ちゃんはヒーローになりたい、と小さい頃から繰り返し言っていた。爺ちゃんは姉の言うことに適当に合わせていたし、俺もそれを冗談めいたものと認識していた。
　だけどそう思っていたのは俺と爺ちゃんだけで、姉ちゃんは本気だった。本気でヒーローになろうとしていた。

　薄々それに気付いていた俺は、一度どうしてヒーローになりたいのかと聞いた事がある。姉ちゃんは言った。

『趣味』
『は？』

　意味が分からなかった。趣味？？えっ、趣味？？？？趣味って普通読書とか映画鑑賞とかそういうんじゃないの？？？？
　そんな俺の疑問に答えるように、姉ちゃんは付け足した。

『あとかっこいいから』
『』

　ますます意味が分からなかった。かっこいいから…？？全く答えになってないし姉ちゃん今年で何歳だっけ？？まだ小学生の方がまともな事言うよ？？
　そんな理由でどうしてそこまで本気になれるのか。俺にはどうしても理解が出来なかった。というか理解出来るやついんのか？
　姉ちゃんの頭の中がどうなっているのか、気になって仕方がなかった。多分何も詰まってないと思うけど。

　でも小学生と違うところは、本気で努力している事だと思う。
　姉ちゃんの強さは世界一、いや、宇宙一だ。俺も身体能力とかは人より高いけど、姉ちゃんには死んでも追いつける気がしない。
　強さの秘訣についても聞いたが、教えられたのは一般的な筋トレ内容だった。当時はそれを鵜呑みにしていたが、今思えばはぐらかされていた。本当は想像を絶する程の努力をしてきたに違いない。普通の筋トレで髪色が変色するなんて有り得ないからだ。

　俺は姉ちゃんの背中を見て生きてきた。それはきっと、これからも変わらないのだろう。



　ところで姉ちゃん。洗濯物は裏返しにして出さないでって言ったよな？！手間が増えるの俺なんだけど！！

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