【ぬらりひょんの孫】遠野の夜兎 3

77話○動きを封じる技 ページ3

神威が考えた作戦はこうだった。

まず、Aの持ち技《影ふみ》で土蜘蛛の自由を奪い、
そこに神威の《疾風怒濤》で攻撃をする。

直に攻撃するため、土蜘蛛の受けるダメージも大きい。
が、その分危険だった。

Aの《影ふみ》は相手の影に触れて、初めて対象の動きを封じることができる。

影を触る…つまり、土蜘蛛に近ずかなければならない。

朝方の今、日光は雲の隙間からまっすぐ真下に落ちている。

土蜘蛛の真下に入らなければ、影に触る事は不可能だった。

もし気付かれればAが狙われる。そして、攻撃する自分も失敗すればただでは済まないだろう。

神「…でも、やるしかない」

やる価値はある。
この一手で少しでも状況を変えたかった。

冷麗達はまだ死んではいない。

神威は確信していた…まだ、妖気は消えていない


目の前の土蜘蛛に目を向ける。その２本の脚の向こうに朱色の頭がちらりと見えた。

《影ふみ》

瞬間、土蜘蛛の体が止まった

土蜘蛛「ぁあん、んだこりゃあ。
体が動かねぇ…!!」


神(きた…ッ!!)

バッ!!

すかさず、助走をつけて天高く跳び上がる。

土蜘蛛「 !?、んだてめぇ…」

神「《疾風怒濤》!!!!」

ゴオオォォオオオッ!!!!

空中で番傘と体の両方にありったけの炎を纏い、その腕へと思いきり叩きつけた。


ドオォォォォォォオンッ!!!!!!

衝撃で爆風、そして砂埃が舞い上がるが、それはすぐに晴れた。


ドロ…

現れたのは、腕丸々１本を失った土蜘蛛。失った腕の肩は炎によって溶けていた。

土蜘蛛「…やんじゃねぇーか、
てめぇ。そして…」

動けないはずの土蜘蛛が前屈みになって足元を見下ろす。

あ「…なっ!?」

Aはまだ技を解いていないが、少ない光によって出来た影で巨体の動きを封じるには、やはり無理があった。

土蜘蛛「おめぇもなぁ。
面白ぇ、潰し甲斐がある!!」

動きだし、襲いかかってきた拳を間一髪で後ろに跳んで避ける。

ｶﾞﾗｯ
あ「!?」

しかし、着地した足元の瓦礫が崩れ、体がよろけてしまった。

土蜘蛛が片手でその小さな体を掴んだ

イ「A!!」

あ「っ、はなせッ!!」

小さくても夜兎の力は半端ではない

暴れるAを掴む拳が微かに開く…が、すかさずもう片方の腕の計２本で完全に動けないようにしてしまった。

土蜘蛛「おぅおぅ、やるなぁ。

…んぁ？
そーいやぁ、惨隴が朱色の奴を捕まえろとか言ってたっけなぁ〜」

捕まえたAの髪色を見る土蜘蛛。

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