【ぬらりひょんの孫】遠野の夜兎 3

84話○堕ちるモノ ページ11

あ「……」


何故あの時、兄の瞳から涙が流れたのかが今なら確と分かる。



自分が生まれていなければ、両親も他の人も死ぬことはなかったのだろう。



途端、心の奥底から何かが込み上げてくる。



あ「私の所為で、お兄ちゃんが泣いた？お母さん達が死んじゃった…？」



ぽろぽろと頬を涙が伝う。




羽衣「…お前の兄は、さぞかしお前の事を恨んでおるじゃろうのぉ？」






『…A、いや。“お前”なんて俺の家族じゃないヨ!!』


『何だよその瞳、気持ち悪ィ』


『お前の所為で皆は死んだ…お前が皆を殺したんだ!!』



耳元で声が聞こえる。


それは、だんだんと身近な人たちの声へと変わっていった






あ「……やだ、ごめんなさい、ごめんなさい…っ！

分からないよっ、どうしたらいいの。ねぇ？おしえてよぉ…っ!!」


響く声に耳を塞ぎ、助けを求めすがる。




動揺と絶望に染まった瞳は、光を失っていた。



羽衣「…そうじゃのぉ。お前にはもう帰る場所が無いのぉ……。


どうじゃ？

妾と共に来い、そうすれば、お前の帰る所は妾の元じゃ」




あ「…皆には、手を出さないでくれる？」

羽衣「…フフフ。さぁ、ゆくぞ」


差し出された手をにぎった。









「我元へ下れ、輪廻を統べる者よ。

その能…余興、土産にして勝るモノは無かろう。



のぅ、＿＿＿＿？」







堕とす狐









「……おにぃ、ちゃん。

ゴメンナサイ、


たすけて＿＿＿＿＿＿」






堕とされた兎









ｷﾞｼ、

正常に廻っていたはずの歯車が


ｷﾞｼ。


少しずつ噛み合わなくなっていく

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