どうやら私は紫原の初めてのようです。【黒子のバスケ】

第192Q ページ31

火「なーに、もう全部終わったような顔してんだよ。」


暗い顔の青峰に、大我が言葉を投げた。


火「まだ始まったばっかだろーが
またやろーぜ、受けてやるからよ。」


青峰はただひたすらにバスケが好きで、だから対等にわたりあえるライバルを求めていた。

でも、己が強すぎるが故に、ライバルどころか、相手の戦意まで奪い去っていった。



そんな青峰に、大我は屈しなかった。それどころか、勝ってみせた。

こんな言葉をくれる大我に、私はきっと青峰と同じ気持ちになっているはずだ。


大我、あんた最高だよ！！！ほんと！！


そして


黒「…青峰君」


テツヤもまた、自分のバスケで勝ち抜いた。


青「お前の勝ちだ…テツ」


それを聞いて少し考えたテツヤは、…1ついいですか、と拳を青峰に突き出した。




…あ



私はそれだけでわかってしまった。

遠い記憶が蘇ってくる。


黒「あの時の拳を、まだ合わせてません。」

青「…なっ、はぁ！？いーじゃねーかそんなもん！とっくの昔だろ！」
黒「いやです。だいたい、シカトされた側の身にもなってください。」


グッと言葉に詰まった青峰は、短く息を吐いた。


青「…わかったよ。ただしこれっきりだ。


次は勝つからな」



黒「はい」


テツヤと青峰が拳を突き合わせてるのを、ベンチから眺めていた。

さっきまで止まっていたはずの涙が、次から次へと零れてくる。仕舞いには嗚咽が出そうになって口を覆った。




あぁ…良かった。良かったね…テツヤ。

言葉では上手く言えない。けれど、心の底から嬉しくて、懐かしくて…

ベンチに戻ってきた先輩方に心配される程、私は泣きじゃくってしまっていたのだった。




黒「Aさん、そろそろ泣き止んでください。控え室行きますよ。」
『ううっ、だってぇ…』

黒「ちゃんと、僕のバスケで勝ってきたので、後で褒めてください。」

『褒めるけど……って、褒める！？？？』


褒める、とは！？


黒「泣き止みましたね。行きますよ。」
『ちょっ、褒めるって何すればいいの！？』


そう言って笑うテツヤはキラキラと輝いていて眩しかった。






あの試合で



合わせられなかった拳を

失った信頼を

閉ざした光を




今日、取り戻した。



忘れ物は何もない。


＿＿＿

雨「テスト期間なのでしばらく更新開きます(多分)」

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